近畿大学,奈良女子大学,スロベニアのリュブリャナ大学の研究グループは,原子や分子が規則正しく並ぶ結晶,規則性がない非晶質とも異なる第3の固体「準結晶」の構造に関して,これまで少数しか知られていなかった準結晶タイリング(三角形や四角形などの図形の組み合わせで平面を隙間なく埋めること)を無限に構成する方法を発見した(ニュースリリース)。
準結晶は,原子や分子が一見バラバラなのに一定の規則性を持って並んでいるという特徴がある。これまでに金属比の一種である黄金比,白銀比,青銅比の構造が発見されていたが,構造のパターンが非常に少ない物質だと思われてきた。金属比は,x2-kx-1=0の解として求めることができ,k=1の時が黄金比,k=2の時が白銀比,k=3の時が青銅比となる。
今回,青銅比の準結晶を構成する長方形および大きさの異なる2つの正三角形の3つの図形を用いて,長方形の長さの比率を変化させて準結晶タイリングのパターンを探ったところ,k=6の時,k=9の時,k=12の時…というように,3の倍数の時に準結晶となることがわかった。さらに,k=∞になると,正三角形だけで構成される規則正しく並んだ,結晶と同様の構造になるという。
準結晶は,結晶や非晶質の例外的な物質だと思われていたが,今回の研究により無限に構造のパターンが存在し,その行き着く先が結晶であることを示した。研究グループは,今回の研究成果により,金属ナノ粒子,酸化物フィルム,金属間化合物などのさまざまな複雑な物質構造を特徴付ける理論的枠組みを与えることが期待できるとしている。