市大ら,シングルnm金粒子を簡便に合成

大阪市立大学と東北大学は共同で,添加物や後処理を必要としないシングルナノメートルサイズ金粒子の簡便な合成法の開発に成功した(ニュースリリース)。

化学的に不活性な金をナノメートルサイズの粒子にすると,触媒活性や特異な光学特性が発現するため医薬品やセンサーなどへの応用が期待されている。ただし,これらの用途に用いるためには粒子の大きさや表面状態などを制御する必要がある。

化学的手法による通常の合成法では,まず金イオンを薬品により還元したのち,キャッピング剤の添加によって粒径の揃った金ナノ粒子を生成する。しかし,この方法では反応終了後に余分な添加剤(還元剤,キャッピング剤など)を除去する必要がある。

一方,還元剤が不要な方法としてレーザーを用いる手法が注目されている。たとえば,水中に浸漬した金の小片にパルスレーザーを照射する,液中レーザーアブレーション法による金ナノ粒子の生成が報告されている。

しかし,この方法で直径10nm未満の粒子を得るためには粒子成長を抑制するキャッピング剤の添加を行なうか,レーザー照射終了後に遠心分離などの操作を行なう必要がある。そこで研究グループは,添加剤や後処理の必要がない簡便なシングルナノメートルサイズ金粒子合成法の開発に取り組んだ。

今回,金イオン(塩化金酸)を溶解した水と有機溶媒(ノルマルヘキサン)の混合溶液にフェムト秒レーザーを照射するだけで,シングルナノメートルサイズ金粒子を簡便に合成することに成功した。

化学的手法とは異なり,この方法ではイオンを還元するための還元剤,粒径制御のための界面活性剤,そして粒子保護のためのキャッピング剤の必要がなく,さらに室温・空気下で実施可能。

また,生成する金ナノ粒子の平均粒子径はレーザーの照射時間に依存せず,常に10nm未満で一定だった。そのため,粒径を揃えるための遠心分離操作などの特別な処置も不要。

さらに,生成した粒子を乾燥すると粒子同士が接触せずに直径数百nm程度の円形状に集合する。この性質を活用することで,金粒子を基板へ規則正しく配列・集積させる,あるいは担体へ担持できると期待され,触媒や光学材料などの分野でのさまざまな用途が考えられるとしている。

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