東大ら,重力波検出器で暗黒物質を探索

東京大学と京都大学の研究グループは,レーザー干渉計を用いてアクシオン暗黒物質の探査を行なう新しい手法を考案した(ニュースリリース)。

我々の宇宙の組成の約1/4は暗黒物質と呼ばれる未知の物質であることが知られている。暗黒物質の候補として,アクシオンと呼ばれる粒子が注目されている。しかし,多くの実験観測においてもアクシオンの確たる証拠はまだ発見されておらず,より精度の高いアクシオン探査の手法が求められている。

研究グループは,アクシオンに直線偏光を持つ光の偏光面を周期的に回転させる性質があることに着目し,レーザー干渉計を用いて,ひも理論などの高エネルギー物理から存在が予言されているアクシオンを探査する新しい手法を考案した。

アクシオンが暗黒物質である場合,地球上を進むレーザー光の偏光面が,アクシオンの質量に応じた周波数で回転する。この偏光面回転の大きさはアクシオンが光に与える影響の度合いを表す結合定数に依存する。したがって,レーザー光の偏光面回転を観測して結合定数を測定できれば,アクシオンを探査することができる。

今回,2枚の正対する合わせ鏡で構成したファブリ・ペロー干渉計を用いて,レーザー光の偏光面回転を高精度で検出する手法を考案した。ファブリ・ペロー干渉計ではレーザー光が合わせ鏡の間を何度も往復するので,偏光面回転を増幅することができ,結合定数の高精度測定が可能となる。

現在世界に建設されているレーザー干渉計の中で,最も精度が高いものの一つに重力波望遠鏡がある。この手法は,重力波望遠鏡の光検出部に偏光測定用の装置を取り付けるだけで良く,重力波観測を妨げない。この手法により,結合定数の測定の上限値をこれまでより10倍程度向上させられる。

また,次世代の重力波望遠鏡として米国が中心となって計画しているCosmic Explorerや日本が中心となって計画しているDECIGOを用いれば,現在の結合定数に対する測定精度を1000倍以上向上させることができ,もし,有限の値の結合定数を発見できない場合にも,これまでの測定の上限値を大きく更新できる。

研究グループは,まず既に建設されている重力波望遠鏡にこの手法を適用した実験計画を進める。もし日本に建設されているKAGRAに適用できれば,早ければ2019年からアクシオン暗黒物質の探査を行なうことができる。

その後,測定データを蓄積したり,将来建設される次世代重力波望遠鏡にこの手法を適用したりすることで,結合定数の測定精度をさらに向上させ,上限値の更新や,さらには暗黒物質としてのアクシオンの兆候を掴むことが期待されるという。

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