東芝,フィルム型光センサーでパルス検出に成功

東芝は,人の検知,体温の測定,物体までの距離の測定,放射線の計測などさまざまな用途に使用される光センサーにおいて,柔軟・軽量といった特長を持ち大面積化が可能な有機半導体を用いた,高感度のフィルム型光センサーを開発した(ニュースリリース)。

近年IoTの普及により,薄型・小型・大面積化が期待できる有機半導体薄膜を用いた光センサー(有機光センサー)の開発が注目されているが,有機光センサーは,無機半導体を用いた光センサーと比べて,光の検知特性が十分ではなく,その応用範囲に制限があることが課題となっている。

例えば,シンチレーターは放射線を受けて微弱な光しか発しないため,有機光センサーでパルス検知をすることは困難だった。また,有機半導体は無機半導体と比較して電荷の輸送特性が低く,光検出時に半導体層内で生成した少数の電荷を電流として検出することが困難なため,パルス検出が難しいという課題があった。

そこで同社は,一個の放射線の入射に伴うシンチレーターからの微弱な光も検知することができる高感度なフィルム型有機光センサーを開発し,有機半導体を用いたフィルム型の光センサーとして世界で初めて,放射線のパルス検出に成功した。

開発したフィルム型光センサーは,透明電極,バッファ層,有機半導体層,金属電極の積層構造になり,有機物を主成分としたフィルム状の材料で封止をしている。放射線の検出にはこの素子にシンチレーターを取り付ける。シンチレータから放出された光が透明電極とバッファ層を透過し,その光を有機半導体層で吸収し,電荷を生成する。その電荷を,両電極から電流としてパルス検出する。

微弱な光を検出するためには,有機半導体層で生成した電荷をロスなく取り出し,電流信号の強度を高めることに加え,測定時の電流のノイズを低減することが必要。今回同社は,電荷の取り出し効率の向上のため有機半導体層の材料構成の最適化および成膜プロセスの改善を行ない,光検出効率80%以上を達成した。

また,有機半導体層の材料や構造を調整し,最適な種類のシンチレーターと組み合わせることで,ガンマ線,エックス線等,ベータ線以外の放射線検出も可能という。

同社は,薄型・軽量を実現するこのセンサーはIoT・ウェアラブルセンサーなどへの応用を可能にするとともに,大面積化により一度に広い範囲の計測を実現することから,今後,工業用,医療用など多方面への活用が期待できるとしている。

その他関連ニュース

  • 高機能フィルム世界市場,裾野拡大で2023年は回復へ 2022年08月09日
  • 千葉大ら,N型有機半導体の性能向上に新たな知見 2022年07月20日
  • 東大ら,高性能有機半導体の開発に新たな指針 2022年06月17日
  • 公大ら,100倍超光耐久性ペンタセン誘導体を開発 2022年06月09日
  • 2022年,LCD-TFT/AMOLED向け偏光板7.1%増 2022年06月07日
  • 東レ,低コストな超ハイバリアフィルムを創出
    東レ,低コストな超ハイバリアフィルムを創出 2022年05月09日
  • 2035年有機エレクトロニクス市場,7兆4,525億円 2022年04月26日
  • 東大ら,宇宙観測技術で分子イメージング技術を開発 2022年04月05日