JAXAら,持続可能な住宅システムを南極で実験

宇宙航空研究開発機構(JAXA),情報・システム研究機構国立極地研究所(極地研),ミサワホーム,ミサワホーム総合研究所(ミサワ総研)の4者は,極限環境下での持続可能な住宅システムの構築を目的とした実証実験を,南極・昭和基地で2020年2月より実施する(ニュースリリース)。

今回の実験では,以下の3項目について検証する。

(1)構造物の柔軟な拡張・縮小の検証
構造体に開口部や換気設備,電気配線,内・外装材,太陽光発電モジュール(PVモジュール)等を予め装備したユニット2基を設置場所で連結し,その間にジョイントスペースを設けることで居住空間を拡張する。その後,1基ずつのユニットへ縮小する作業を行なう。この際の施工の簡易性や今回のために開発した施工治具,作業支援センサーの南極での実効性について検証する。

(2)エネルギー利用の最適化の検証
自然エネルギーシステムは,太陽光発電と集熱蓄熱システム等により,ユニット内部の暖房エネルギーの利用最適化を実施し,その効果を検証する。

また,ユニットは,120mm厚の木質系高断熱パネルをベースに,付加断熱を施し,断熱性能の目標値をUA値(外皮熱貫流率)0.20W/m2・Kとしている。この数値は,日本における寒冷地域(北海道や東北の一部)のZEH(標準的な新築住宅で年間の一次エネルギー消費量が正味で概ねゼロとなる住宅)基準であるUA値0.4W/m2・Kを大幅に上回る数値であり,国内最高レベルの断熱性能となるという。これらの断熱技術による省エネルギー性能を検証する。

(3)センサーを用いたモニタリングの検証
ユニットには,温湿度・CO2検知,火災検知などの居住者の安全を見守るセンサーを搭載している。これらをモニタリングすることで,ユニットの状態をリアルタイムに把握し,居住空間の安全性・快適性等を検証する。

ミサワホームおよびミサワ総研はユニットの製造ならびに未来志向の住宅への検証データの展開を検討し,極地研はユニットの輸送ならびに南極におけるユニットの機能検証実験を行なう。JAXAはユニットの技術支援,検証データの分析ならびに有人拠点建設への展開を検討する。この4者共同研究により,未来志向の住宅・南極での基地建設・月面の有人拠点の開発を目指すとしている。

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