矢野経済研究所は,2019年の高機能フィルム世界市場を調査し,製品セグメント別の動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
高機能フィルム市場はこれまで,高度化・多様化するニーズに合わせた原反と加工とを組み合わせ,付加価値を高めることで発展し続けてきた。しかし,最近ではFoldable(折り畳み)スマートフォンや5G基板など新たな市場の形成が進み,従来の原反+加工の改良開発にとどまらない新しいフィルムの開発が進んでいる。
新たに開発されたフィルムのうち,Foldableスマートフォンカバー用透明PI(ポリイミド)フィルムの世界市場規模は,フィルム加工及び組み込み段階での歩留まりなどを考慮すると,2019年には130,000m2(メーカー出荷数量ベース)になる見込みという。
注目トピックとして,フィルムメーカー各社では材料まで遡った開発を行なうことで新しいフィルムを生み出し,新たな領域でのニーズに応えるという取り組みが始まっている。
5G基板(第5世代通信用基板)では,原料のポリマーから見直し,吸水率や誘電正接をLCPに近付けた改良PIを製膜した新しいフィルムの開発が進展し,国内外のメーカーで研究開発とサンプルワークが進められている。
また,今までFPC(フレキシブル基板)の絶縁フィルムとしての採用はあまりなかったCOPなどの材料でも低誘電,低吸水,高耐熱の実現に向けた研究開発が行なわれ,近い将来の5G基板での採用をターゲットに材料(ポリマー)開発の動きが活発化している。
Foldableスマートフォンカバーでは,PIの分子構造及び配合を改良,モディファイすることで高透明化するとともに,材料配合および重合技術の工夫で耐衝撃性や変形耐性などの機械的強度の改善を実現した。
PI以外では透明アラミドフィルム,耐屈曲性PETフィルム,自己修復機能付き光学用高透明ウレタンシートなどのサンプルワークが進められているが,これらはいずれも製膜や加工の工夫だけでなく材料開発の中から生まれた新たなフィルムとなる。
フィルムメーカーでは,これまでフィルムの限界により市場として意識してこなかった用途,分野へ向けた提案が増え,今後,潜在的なフィルム市場に向けた深耕が進展するとしている。