宇宙航空研究開発機構(JAXA)とソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は,将来の衛星間や地上との大容量リアルタイムデータ通信の実現を目指して,共同開発した小型衛星光通信実験装置「SOLISS」(Small Optical Link for International Space Station)を9月11日に打上げ予定の宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機で国際宇宙ステーション(ISS)へ送り届け,「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームを利用して軌道上実証を実施することを発表した(ニュースリリース)。
共同開発は,JAXA宇宙探査イノベーションハブの研究提案の枠組みを利用したもので,JAXAとソニーは光ディスク技術を利用した精密指向制御技術による長距離空間光通信技術の近距離での光通信実験を2016年から共同で行なってきた。
軌道上での長距離光通信試験は,ISSの「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されている中型曝露実験アダプター(i-SEEP)にSOLISSを設置し,1550nm帯のレーザーを用いて地上との通信試験を行なう。2019年度中に実証実験を完了する予定だとしている。
SOLISSは,光通信部,2軸ジンバルおよびモニタカメラ部分が外部に露出しており,そのほかは断熱材であるMLI(Multi-Layer Insulator)で覆われている。今回搭載した光通信部は,ソニーが1970年代より研究開発し,CDやMD,DVD,Blu-rayなどで事業化してきた光ディスク技術を用いており,高精度,低消費電力,小型で量産が容易であることなどの特長がある。
約1.2kgで断面のサイズは90mmx100mmであり,内部には光ディスク技術を用いた小型の光制御機構が内蔵されている。双方向通信が可能であり,Ethernet規格を利用した接続により,宇宙においても地上のネットワーク同様に取り扱うことを想定したものになっているという。
搭載されているモニタカメラは,2軸ジンバルの動作確認のため全天球カメラを採用。撮像した写真はISS経由で地上に送信するだけでなく,SOLISSの光通信を利用して地上に送ることも可能だとしている。