京大,多光子顕微鏡で皮膚の線維構造を解明


京都大学の研究グループは,刺しゅう枠から着想した組織伸展器でヒトの皮膚を伸展し,組織透明化処理と多光子顕微鏡を用いて3次元観察を行なった結果,コラーゲン線維と弾性線維が同じ方向に分布すること,またそれらが網目状に分布することを明らかにした(ニュースリリース)。

皮膚は角質を作る表皮層と線維性成分と液状成分から成る真皮層の2層構造で構成されており,皮膚の真皮は無数のコラーゲン線維や弾性線維で構成されている。皮膚は引き裂きに強く,この強靭さはコラーゲン線維の強さと関係している。

真皮のコラーゲン線維が無秩序に分布するのか(不織布のような構造),規則的に分布するのか(ファブリックのような構造)については結論が出ていなかった。なぜならば真皮の中では,たわんだコラーゲンが密集し複雑に絡まっているため,線維1本1本がどの方向に向かっているかを把握することが困難なためである。

研究グループはコラーゲン線維のたわみと密集がその構造を解析する妨げとなっていると考え,ヒトの真皮を全方向に等しく伸展できる器械の製作に着手した。そして,円形の木枠の上に布を置き,一回り大きな円形の木枠をはめ込んで,布をぴんと張る刺しゅう枠の伸展方式を真似た組織伸展器を製作した。

まず新鮮な真皮シートを少しずつ伸展しながら多光子顕微鏡で撮影した。シートの中心部では,たわんだコラーゲン線維が伸展とともに直線状になった。また弾性線維のネットワークは相似的に拡大した。次に皮膚全層の観察を行なった。小型の伸展器械を作成し,皮膚サンプルを125%の倍率で伸展,その状態を維持したまま固定液に浸漬した。続いて光の透過性を向上させるため組織透明化処理を行ない,多光子顕微鏡で3次元撮影した。真皮を浅層から深層にスキャンすると,異なる方向のコラーゲン線維の群れが現れることがわかった。

それぞれの群れの配向方向をフーリエ変換という画像処理で計測し真皮全体の角度データを集計すると,真皮浅層のヒストグラムには2つの山が現れた。2つの山は平均しておよそ 60度離れており,コラーゲン線維がひし形に交差して網目構造を形成すると解釈できる。また,弾性線維とコラーゲン線維の配向方向の違いを調べると,線維の80%で角度差15度以内だった。この結果から弾性線維もコラーゲン線維と同様に,網目状に分布することがわかった。

コラーゲン線維と弾性線維が同じ方向に分布することは,弾性線維の発生機序を考える上で重要と考えられ,将来,健常に近い柔軟性を持つ皮膚再生にも役立つと期待されるという。さらには,研究で用いた伸展法は,他の線維性臓器の構造研究への応用も期待できるとしている。

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