浜松医大ら,皮膚貼付型組織オキシメーターを開発

浜松医科大学,静岡大学,医薬品卸のアステムは,皮膚貼付型小型組織オキシメーター「TOE-20(トウ トゥエンテイー)」を共同で開発し,2021年4月27日に上市した(ニュースリリース)。

外科医は対象となる臓器や,皮膚組織の”活きの良さ“については,組織の色や触れた温度で経験的に判断せざるを得なかった。

組織中の酸素飽和度は,血流が悪いと低値となる組織のいわゆる”活きの良さ“を示す指標だが,リアルタイムで組織の酸素飽和度をモニターできるオキシメーター(酸素飽和度測定装置)はこれまで存在しなかった。

研究グループは,対象臓器(組織)として皮膚,腸管を標的として測定深度4-5㎜のオキシメーター開発に取り組んだ。静岡大学が開発した浅層用センサーの計測アルゴリズムのもと,様々なインターオプトード配列の検討とプローブをアステムが試作し,それを用いて静岡大学で測定感度試験を行ない,光源-受光器間の最適距離を検討した。

また,実際のセンサ形状を考慮したモデルを作製し,それを基にアステムでデバイスの回路設計,ファームウェア開発ならびにアプリケーションを開発した。

並行して浜松医科大学では,臨床応用の可能性について検討を行ない,実際の臨床で応用した。その結果,これまで不可能であった標的とする四肢の虚血部位の組織酸素飽和度をリアルタイムに測定しながら術中に術式を決定していく(Target region Oxygenation-based Endovascular treatment:TOE)という新しい手術方法が可能となったという。

現在,虚血肢に対するこの製品を用いた組織酸素飽和度計測の有用性のエビデンスを獲得するため,多施設前向き臨床研究(NIRS-TOE study)を実施している。

この研究においては,虚血肢の血管内治療の際にリアルタイムで組織酸素飽和度計測をこの製品で測定することにより,患者に必要にして十分な治療を行ない,過剰な手技を行なわないことにより,手術時間の短縮,合併症の減少や,医療資源の有効活用につながる成果が得られることを期待しているという。

さらに研究グループは,乳癌手術などで皮膚移植を行なった際に,移植皮弁の血流状態をモニターすることにより,血流不全をリアルタイムで検知することが可能になると考えており,今後臨床応用を進める。

さらに,これらの領域で臨床応用を実施しながら,国内だけではなく米国などの海外への展開を検討しているとしている。

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