矢野経済研究所は,国内アイウェア市場を調査し,製品セグメント別の動向,注目トピック,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
これによると,2017年の国内アイウェア小売市場規模を前年比99.6%の5,023億円と推計している。2013年以降はプラス成長を続けてきたが,2017年は微減ではあるもののマイナスとなった。
2017年は眼の健康寿命延伸につながるアイケアサービス提案による買い替え需要増や,インディヴィジュアルレンズ(顧客の眼の状況に合わせて個別設計で作られるレンズ)が徐々に浸透してきたこと,売り場で高機能レンズの提案が積極的に行なわれて単価が上昇したこと,プライベートブランド商品による差別化戦略が奏功したこと,ファッション性の高いリーディンググラス(老眼鏡)のヒット等好調要因は多かったものの,ヒット商品となった紫外線対策メガネの需要も一巡したことで,微減で着地したという。
近年のアイウェア小売市場を取り巻く環境は,人口減少やライセンスビジネスの低迷,生産の中国シフトや海外からの低価格品の流入などにより厳しさを増している。また,今後の円安によるコスト増加,消費税率引き上げなどの影響による消費マインドの弱まりや物価動向を踏まえると,その先行きは予断を許さない状況が続いているとみる。
市場規模の拡大という意味ではこれまで苦戦を強いられてきたが,その一方で,商品開発など熾烈な企業間の競争が行なわれることで,参入企業の目まぐるしい攻守の入れ替えが起こるなど,市場自体は常に活発なマーケットとなっている。
直近では,アイウェアを必要とする45歳以上のミドルシニア世代の増加を背景として,ブルーライトやUVカット,花粉対策などの機能性アイウェアや,日本の素材や技術にこだわったメイドインジャパン製品,キャラクターブランドやアパレルブランド,デザイナーとのコラボ商品,眼鏡型ウェアラブル端末,グローバル市場への展開,オムニチャネル展開などで,新しいビジネスとしての広がりがみられる。
注目トピックとして,ブルーライトカットをはじめ,UV,花粉対策などの機能性アイウェア商品のヒットにより,各社でさまざまな切り口による商品開発が行なわれ,開発競争が激化している。
また,近年はHEV(高エネルギー可視光線;ブルーライト)やNIR(近赤外線),バイオレットライトなど美容や健康といったキーワードで,消費者へ訴求することに成功している。その結果,普段視力矯正が不要な,アイウェアを必要としない非メガネユーザーを取り込んだ「非視力矯正市場」が創出されたという。
将来展望として,最もアイウェアの需要が高まる45歳以上のミドルシニア世代が増加を続けていくことから,ターゲットが望む商品を提供していくことができれば,今後も国内アイウェア小売市場は底堅く堅調に推移していく見込み。
また,技術の進展によりアイウェアのほか,コンタクトレンズや眼内レンズ,レーシック,オルソケラトロジー(視力矯正治療)などのアイウェア周辺市場は広がっていく見通し。将来的にはアイウェア業界といった範疇ではなく,眼にまつわるものをトータルとして提案する視点が必要になるとしている。