遺伝研ら,危険な光合成に対処する細胞増殖を解明

国立遺伝学研究所と神戸大学の研究グループは単細胞紅藻を用い,陸上植物の祖先でもある単細胞藻類が,危険な光合成に対処して「安全な」細胞増殖をしていた方法を明らかにした(ニュースリリース)。

光合成は地球上の生命の生育を支える一方で,高濃度の活性酸素種を生じDNA,タンパク質,脂質などを損傷する。陸上植物においては,細胞増殖は茎頂および根端等の光合成を行なわない分裂組織に限定され,「危険な光合成」と「DNAを安全に複製すべき細胞増殖と次世代個体の創出」は場所(組織)によって分業されている。

一方で,陸上植物よりも先に地球上に出現し,陸上植物の祖先でもある単細胞藻類では,同一細胞が光合成を行ない分裂増殖するが,光合成の危険性にどのように対処しながら増殖しているかは不明だった。

研究グループは単細胞紅藻を用い,以下のことを明らかにした。(1)葉緑体の光合成とミトコンドリアの呼吸(光合成ほどではないがこちらも活性酸素種を生じる)活性が朝方最大となり夕方に向けて低下する(2)光合成・呼吸に比べるとエネルギー変換効率が低い解糖・発酵系が夕方から夜に活性化される(3)核のDNA複製と細胞分裂は夜間におこる(4)夜間の細胞に光を当てて光合成を行なわせるとDNAの損傷頻度が高くなる。

この結果,活性酸素種を生じる光合成と,葉緑体と同様にバクテリアの細胞内共生によって誕生したミトコンドリアにおける呼吸活性が低下する夕方から夜間にDNA複製を行なうことで「安全な」細胞増殖が行なわれていることがわかった。同様の結果は葉緑体成立後間もなく紅藻と分岐した緑藻でも見られたという。

研究グループは,これは宿主である真核細胞と共生体である葉緑体・ミトコンドリアの時間分業により,お互いの対立が回避されることで光合成真核細胞が成立したと考えられるとしている。

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