分子研ら,狭帯域の高テラヘルツ波を発生

独電子シンクロトロン(DESY),独ハンブルグ大学,チェコELIビームライン,分子科学研究所(分子研)の研究グループは,分子研が開発した非線形光学結晶(LA-PPMgLN)を用いて,狭帯域(単色)で高エネルギーの非常に特殊なテラヘルツ波パルスの発生に成功した(ニュースリリース)。

電磁波の一種であり,赤外線とマイクロ波の中間に位置するテラヘルツ波は,粒子加速器の小型化にも役立つ。十分な数の粒子を加速するためには,狭帯域で強力なテラヘルツ波が必要となる。

今回,色のグラデーション(チャープ)を付けたレーザーパルスを使用した。この1発のパルス中の前方と後方で,色が異なっているグラデーションの付いた2つのパルスを2発,わずかな時間差をつけてその結晶に入射することで,2つのパルスの色が異なっている部分が重なることになる。

この色の違いが発生するテラヘルツ波のエネルギーに対応している。結晶(LA-PPMgLN)はこの色の違いを,テラヘルツ波に変換する。わずかにずれた2発のレーザーパルスの色の差から,LA-PPMgLNを用いて,強力なテラヘルツ波のパルスを発生(差周波発生)させた。

この方法では,2発のレーザーパルスを正確に同期させる必要がある。そのためには,元々1つだったパルスを2つに分けて,そのうち1つを少し迂回させて再び重ねると,迂回したパルスはわずかに遅れることになる。

ここで,元々のパルス内部の色変化が直線的であれば,2つのパルスを少しずらして重ねたときの色の違い(エネルギー差)は常に一定になる。しかし実際には色の変化は曲線的で,最初ゆっくり,その後速く変化する。

これは,高エネルギーのテラヘルツ波パルスを発生させる上での大きな障害となるため,パルスの色変化を直線的にする方法として,一方のパルスの色変化を少し引き延ばすことを考えた。

もう1つのパルスの色変化と「同じ曲線的変化」にすることができれば色の違い,つまりエネルギー差は常に一定になる。今回,一方のパルスに短い特殊ガラスをレーザービームの経路に挿入することで,テラヘルツ波出力は13倍強くなったという。

研究グループはこれらの手法を組み合わせることで,0.6ミリジュールのテラヘルツパルスの発生に成功した。これは従来,光学的手段によって発生された,狭帯域(単色)テラヘルツパルスの10倍以上の値。この研究は,実験室のベンチサイズほど小さな次世代粒子加速器の開発につながる画期的な方法になるとしている。

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