米オン・セミコンダクターは6月18日,都内にて車載センシングソリューションについての記者会見を行ない,同社のセンサーポートフォリオにLiDARが加わったことを発表した。これにより同社のセンサーポートフォリオは超音波,イメージセンサー,レーダー,LiDARが揃ったことになる。
同社は車載半導体としてEVおよびADAS向け製品に注力しており,2014年から2018年のCAGRは18%と高い水準で推移している。今回のポートフォリオの補完により,ADASおよび自動運転関連製品におけるセンサーフュージョンの提案力がさらに高まった。
今回発表したLiDAR向け製品はSPAD(Single Photon Avalanche Diode)アレー。Pandionと名付けられたこのセンサーは,905nmのレーザーに最適化されたToF用のエリアセンサーで,400×100の画素を持つことで,対象物の深度情報を画像として捉えることができる。
短距離(3m)用のフラッシュLiDAR,または長距離(100m)用のスキャニングLiDARの受光素子どちらにも使用できるといい,詳細な仕様は公表していないものの,例えば20Wのレーザーを使って100m先に落ちているタイヤ(反射率5%)を検出したいという顧客の要望に応えるべく開発したものだという。
同社はさらに,LiDAR用センサーとしてSiPM(Silicon Photomultiplier)もラインナップしたことも明らかにした。こちらはSPADより高い感度を持つが,高密度のアレー化が難しく,数個ずつの素子を並べた1ラインのセンサーもしくは複数ラインのセンサーなど,顧客の要望に合わせたオーダー品となるようだ。
これらのLiDAR関連技術は,昨年5月に買収したアイルランドのSensL Technologiesによるもの。現在,SPADもSiPMもサンプル出荷を始める段階にあるといい,今後,顧客による評価を進めていく。
さらに,世界トップシェアを誇る車載イメージセンサーについても発表を行なった。同社は昨年末,高温環境下での低照度性能を向上した8.3Mのイメージセンサー「AR0820」の発表を行なっているが,この製品が主要自動車メーカーに採用されたと共に,新たに対フリッカ性能を向上させたHayabusaファミリー「ARO233」の量産を開始した。
このセンサーは2048×1280(2.6M)の製品で,HDR(>140dB)とフリッカ抑制を両立した。先月,米オムニビジョンが同様の製品を発表しているが,こちらは飽和しにくい低感度サブピクセルにより露光時間を稼ぐが,「ARO233」はサブピクセルを用いず,独自の技術「スーパーエクスポージャー」により,画素自体が飽和しにくい構造となっているという。
フリッカ抑制という視点で捉えると,「スーパーエクスポージャー」はサブピクセルを使う方式と比べて劣るものの,S/Nや低照度性能などで優れており,バランスの取れたイメージングを実現しているという。同社ではこの製品を電子ミラー向けとして販売していく計画で,日本の車載認証も得て量産を開始した。
同社は今回,開発品として1.3インチ/12Mの大型イメージセンサーも展示した。これは自動運転を見据えたもので,このセンサーで車の全周の情報を撮るような使用法を想定しているという。