理化学研究所(理研),青山学院大学,東京工業大学,東京大学らの研究グループは,トポロジカル超伝導体FeTe0.6Se0.4(Fe:鉄,Te:テルル,Se:セレン)の量子渦において,マヨラナ粒子の特徴であるゼロエネルギー束縛状態(ZBS)の観測に成功した(ニュースリリース)。
マヨラナ粒子は電荷を持たず,エネルギーが厳密にゼロの奇妙な粒子で,トポロジカル超伝導体の端部や超伝導電流の渦である量子渦に局在すると考えられている。
マヨラナ粒子はノイズに強い次世代量子計算の基本要素として期待されており,マヨラナ粒子の実験的検証が試みられてきた。しかし,これまでの測定ではエネルギー分解能が不十分で,決定的な証拠が得られていなかった。
今回,研究グループは,これまでにない高いエネルギー分解能(20μeV)を実現するために,100mK以下の超低温で動作する走査型トンネル顕微鏡(STM)を新たに開発し,FeTe0.6Se0.4の量子渦近傍の状態を詳細に調べた。
その結果,エネルギーがゼロの束縛状態の観測に成功した。この状態は,通常の電子では説明することができず,量子渦に局在したマヨラナ粒子由来であることを強く示唆するものだという。
研究グループはこの研究成果が,次世代の量子コンピューターの実現に向けたマヨラナ粒子の検出と制御法の基盤になることが期待できるものだとしている。