日本電信電話(NTT)とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は,商用環境において1Tb/s光信号の長距離伝送の実証実験に成功した(ニュースリリース)。
近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に加え,5Gサービスなど新しい情報通信サービスの普及に伴い,基幹系の光通信ネットワークも,さらなる大容量化を経済的に実現することが求められている。そこで両社は,既設の光伝送システムの経済的な容量拡張に向けた,世界最高水準の技術の開発を進めてきた。
実験にあたり,NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルと,NTTが新たに開発した光送受信機を用いて,1Tb/s光信号による波長多重信号の1,122km伝送環境を構築した。
1Tb/s光信号生成のため,最先端のデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機によるデジタルコヒーレント技術を用いて,光の偏波,位相,及び振幅に情報を乗せることで情報量の増大を実現する偏波多重32QAM変調信号(1波長あたり500Gb/s)と,2波のサブキャリア多重を利用した。
これにより,現在の実用システムの1チャネルあたり100Gb/sの10倍となる1Tb/sに伝送速度を高速化することが可能となった。1波長あたりの伝送容量を拡大させることにより,ビット当たりの消費電力も既存装置と比較して,8割以上の削減を見込むことが可能という。
加えて,NTT独自の技術を用いて,光送受信機内部の不完全性(信号経路長や信号経路による損失ばらつき等)を高精度に校正することにより,受信信号を理想信号に近づけ,高品質な信号の送受信が可能となった。これにより,高い信号品質が要求され,技術的難易度が非常に高い32QAM多値光変調信号において,世界最長となる1,122kmの長距離伝送の実証に成功した。
両社は今後,この成果を活かした大容量光伝送システムと高性能な光ファイバ伝送路を含めた経済的かつ大容量なネットワークの実現を推進し,国内外の機関とも連携してグローバル展開を目指すとしている。