京都大学の研究グループは,現在ポルフィリン色素の中で世界最高のエネルギー変換効率を示す色素を上回る性能をもつ,新規ポルフィリン色素を開発することに成功した(ニュースリリース)。
有機太陽電池の一種である色素増感太陽電池は,容易に作製が可能で高いエネルギー変換効率を達成できることから注目を集めている。高いエネルギー変換効率を実現するには有機色素をどのように設計するかが実用化に向けて重要なポイントとなる。
これまで,ドナー・アクセプター構造をもつポルフィリン色素のエネルギー変換効率が最高で13%という一方で,縮環ポルフィリン色素はエネルギー変効率が低く,あまり注目されてこなかった。
今回の研究では,縮環ポルフィリン色素に注目した。縮環ポルフィリン色素はポルフィリンとパイ共役分子の全体にパイ電子が広がることにより,高い光補集能を持つことが知られている。しかし,ドナー・アクセプター構造を用いた色素並みの高いエネルギー変換効率を実現できていなかったため,太陽電池の高性能化を実現するための分子設計指針には不向きであると考えられていた。
そこで,ポルフィリンに直接直接パイ共役分子を縮環させるのではなく,炭素原子を1つ挟み込んでパイ共役分子を縮環させたポルフィリン色素DfZnP-iPrを設計・合成した。この色素を用いた色素増感太陽電池は10.1%のエネルギー変換効率を示し,この値は研究グループがドナー・アクセプター構造を導入したポルフィリン色素,GY50を用いて作成した色素増感太陽電池でのエネルギー変換効率(10.0%)とほぼ同等の性能を持つことがわかった。
研究グループは今回の研究が,高性能化色素増感太陽電池を実現する新たな分子設計指針となることを明らかにした。さらに,LEG4という有機色素を組み合わせることで,DfZnP-iPrを用いた色素増感太陽電池のエネルギー変換効率は10.7%に向上し,GY50を上回る性能を実現したという。
研究グループは,今回の研究における分子設計指針をもとに色素の改良を行なうことで,実用化の1つの目安とされている15%のエネルギー変換効率の実現も視野に入り,色素増感太陽電池の実用化に向けて大きく前進することが期待できるとしている。