阪大,捻じれがない完全被覆分子導線を開発

大阪大学の研究グループは,長さ1~10nmで構造的に捻じれがなく,また,ナノメートルスケールで所望の長さに制御した完全被覆分子導線の開発に成功した(ニュースリリース)。

現在主流のシリコン半導体エレクトロニクスではトップダウンのアプローチで微細化が行なわれている。一方,単分子エレクトロニクスでは分子をつなぎ合わせて電子デバイスを構築するボトムアップのアプローチにより,究極の微小デバイスが作製できると期待されている。

構造の明確なオリゴチオフェンは,長い有効共役長や高い安定性など,優れた特性を有することから,導電性高分子材料に用いられるだけでなく,単分子エレクトロニクスにおける分子導線に適したπ共役系の1つ。しかし,分子が長くなると分子が会合するため,長鎖オリゴチオフェン単分子の電気伝導機構を明らかにすることが困難だった。

分子の会合を抑制するためには,オリゴチオフェンを嵩高い置換基で被覆することが不可欠となる。しかし,嵩高い置換基をオリゴチオフェンに結合させると,置換基の立体障害によりオリゴチオフェンがねじれてしまい,本来の特性が維持されないという問題があった。

これに対して,研究グループでは新たに被覆用の置換基を開発し,共役平面性が保たれた数ナノメートルスケールの完全被覆オリゴチオフェンの開発に初めて成功した。

実際にこの分子の電気伝導度を測定し,過去に報告された歪んだ構造をもつ被覆オリゴチオフェン分子と比較したところ,特に6nmをこえる長い分子では,高い電気伝導度を示していたことから,今回開発された分子が分子導線として優れていることが明らかとなったという。

研究グループは,単分子エレクトロニクス実現のためには,「分子導線」「接合部位」等のコンポネントが不可欠とし,今回の研究により,被覆分子導線の開発が加速的に進展するとしている。

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