京都府立医科大学は,レーザー光による画像強調内視鏡観察(BLI-bright)を用いることで早期胃癌の発見率を向上させることを明らかにした(ニュースリリース)。
胃がんを早期発見するためには従来から白色光による胃カメラ(内視鏡検査)がバリウム検査よりも優れていることが報告されている。2012年には富士フイルムがレーザー光源を用いた内視鏡システムを開発し,レーザー光を用いた画像強調観察であるblue laser imaging(BLI)モード,BLIをより明るくしたBLI-brightモードが日常臨床に応用されている。
これらのモードは選択的に短波長のレーザー光を当てることで粘膜表面の血管や構造が明瞭に観察可能となる。研究グループはこれまでに,白色光と比較して,BLIが胃がんに対する診断能力に優れていることをすでに報告しているが,胃がん自体を見つけなければ診断することはできないため,発見率の向上が課題だった。
今回の研究では,胃がんが現在あるいは過去にある患者,あるいは萎縮性胃炎がある患者,合計650人に対して,内視鏡検査を行なった。白色光でまず胃全体を観察してからBLI-brightで観察する(白色光先行)群298人と,BLI-brightでまず胃全体を観察してから白色光で観察する(BLI-bright先行)群298人の2群に無作為に割付け,胃がんの発見率を検討した。
その結果,白色光先行群では胃がん24病変中12病変が白色光で見つかり,白色光での発見率が4.0%,発見割合が50%,見落とし割合が50%だった。それに対しBLI-bright先行群では,胃がん29病変中27病変がBLI-brightで見つかり,BLI-brightでの発見率が9.1%,発見割合が93.1%,見落とし割合が6.9%だった。
研究グループは,このことからBLI-brightが白色光より有意に胃がんの発見が多くなり,見落としを少なくできることを証明した。特にピロリ菌除菌後,胃がんの既往がある高度の萎縮性胃炎の症例には特に有用であることが判明した。
実際に白色光で見逃し,BLI-brightで発見された胃がんの画像では,白色光ではがんと周囲粘膜との見分けがつかないが,BLI-brightでは胃がんが褐色調に見え,周囲粘膜との違いが明瞭に見えることで発見できることが可能だという。
研究グループは,今回の研究成果により,胃がんの見逃しを減らし,より多くの胃がんを早期に発見・診断することで胃がんによる死亡を減少させることが期待できるとしている。