筑波大ら,高強度レーザーの金属破壊を直接観測

筑波大学,高エネルギー加速器研究機構(KEK),熊本大学,東京工業大学,イスラエルのテクニコン-イスラエル工科大学の研究グループは,KEKの放射光実験施設「フォトンファクトリー・アドバンストリング」(PF-AR)を用いて,金属内に伝搬する衝撃波によってナノ秒の間に進行する金属組織の微細化を直接観測することに成功した(ニュースリリース)。

衝撃波は音速で伝搬するため,衝撃波内の破壊現象についての評価は難しく,衝撃破壊前と後の物質を見比べて想像するしかなかった。

研究グループは,衝撃破壊の瞬間を実際に見るために,純アルミニウム箔内の金属組織の衝撃破壊による微細化に注目した。PF-AR ビームライン NW14Aの,原子サイズの波長かつ100psの時間幅を持つパルス状のX線を使った時間分解X線回折を用いると,純アルミニウム箔の金属組織の微細化過程を精密に調べることができる。

研究グループは,この測定法と,ナノ秒のパルス幅を持つ高強度レーザーを組み合わせた実験を考案した。高強度パルスレーザーはたった1回,試料に集光照射させるだけで,試料表面のコート材を吹き飛ばすことにより5万気圧以上の高圧衝撃波を発生させることができ,それだけで試料に穴が開く。

測定ではまず,破壊前の試料のX線回折像を撮影する。高強度パルスレーザー照射1回の8ns間に,同期させた100ps間のX線パルスを1回だけ照射し,衝撃波が伝搬する間に衝撃破壊中の試料のX線回折像を撮影する。試料を替え,X線パルス照射のタイミングを3nsずつずらして繰り返し測定を続け,計100組の回折像を得た。

破壊前と破壊中の回折像の各回折点を照らし合わせると,金属結晶が微細化していることはもちろん,金属原子の配置が粒子内でどれだけずれているか(不均一歪み)がわかる。X線回折像の解析の結果,マイクロメートルサイズだった金属の結晶粒は衝撃破壊によりナノメートルサイズまで細分化し,さらに極めて小さくなった各金属結晶内部で結晶の不均一性(結晶内の原子位置のずれ)が瞬間的に増大していることがわかった。

また,パルスX線をストロボ的な測定に応用することで,衝撃破壊後に観測される金属組織の状態とは異なる,衝撃破壊中の組織の微細化や結晶の不均一性を観測することに成功した。

研究グループは,今回の研究により,これまで極めて困難であった衝撃破壊の評価を可能にするだけでなく,レーザーピーニングなどに代表される衝撃波を利用した組織微細化加工に応用できるとしている。

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