アメリカのCMOSイメージセンサーメーカーであるオムニビジョンは5月14日,車載向けの新製品として, HDRとLEDフリッカー抑制機能の組み合わせアルゴリズムを搭載した車載用映像処理プロセッサー(ISP)「OAX4010」の発表を中心とした記者会見を都内で行なった。
ヘッドランプや車幅灯,ウィンカー,テールランプなど,自動車の灯器類の光源としてLEDの採用が増えているほか,道路上にも視認性の向上や表示内容の可変を目的としたLED信号や標識が設置されるケースも目立つようになってきている。その一方で,ADASや自動運転の実現で採用が進むことが期待される車載カメラにおいて,LEDフリッカーが問題となっている。
LEDフリッカーとは,そのシャッタ―のタイミングとLEDの点灯周期が干渉することに起因する。通常に点灯しているLEDが,カメラを介することで消灯していたり点滅していたりするように見えるもので,ADASや自動運転のシステムが状況判断を誤る原因となるほか,今後普及が進む電子ミラーに後続車のウィンカーが写らないことなどが心配されている。
特にトンネルの出入り口など照度が極端に異なる部分が共存するような場面では,HDR機能を搭載したセンサーが威力を発揮するが,従来のHDRセンサーはトンネル内部など暗い部分は長時間のシャッタースピード,LED信号やトンネルの外のように明るい部分は短時間のシャッタースピードを用いた両方の画像を合成するため,こうした状況でLEDフリッカーが発生する懸念があった。
今回発表したISP「OAX4010」は,既に量産を開始している同社のLEDフリッカー抑制機能を搭載したイメージセンサー「OX01A10」(アスペクト比 1:1.2,解像度 1280×1080)と「OX02A10」(アスペクト比 2:1,解像度 1840×940)に対応するISPで,LEDフリッカー抑制機能とHDR機能を車載用温度対応で実現した。
両センサーはRGBの各ピクセルに,開口率の小さなサブピクセルを備える。感度を抑えたサブピクセルは11ms以上と,メインのピクセルよりも飽和するまでの露光時間を長く稼ぐことができる。ヨーロッパのLED標識は90Hz,デューティ比10%で動作するため,このISPと組み合わせることでLEDフリッカーを防ぐことができる。
また,このISOは60fpsのカメラ1つ,または30fpsのカメラ2つの映像処理が可能なため,サラウンドビューシステムのISP個数を半減できるとしている。同社では 「OAX4010」についてサンプル出荷を開始しており,年内にも量産化する計画だ。
この日はこの製品の他に,カテーテル向けのケーブル付き医療用超小型カメラとして提案する「OVM6946」「OVM6948」を展示した。「OVM6946」はパッケージサイズ2.27mm×1.05mmx1.05mm。30fpsで解像度は400×400。「OVM6948」はパッケージサイズ1.168mm×0.64mm×0.64mm。30fpsで解像度は200×200となっている。ここでは「OVM6946」に日立金属がケーブルをアセンブリーしたものを展示した。
「OS02C10」は近赤外の感度を向上させたカメラ。センサー内で電荷がより滞留する構造とすることで,従来品と比べて850nmで60%,940nmで40%量子効率を向上させた。これにより,監視カメラ用途において照明用赤外線LEDの消費電力を1/3程度に削減することが可能だという。
グローバルシャッターセンサー「OG02B1B」(モノクロ)と「OG02B10」(カラー)は,1600×1300の解像度で60fpsで動作する。同社はグローバルシャッターの歪みの無い画像が物体検知に有用だと考えており,車載グレードの「OV2311」も用意する。具体的には乗員監視,特に瞼の動きを観測する眠気検知において有効だとしている。