北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は,蛍光タンパク質のフォトルミネッセンス(蛍光)を電気的に制御する手法を世界で初めて確立し,この原理を用いた微小ディスプレーの作成と動作に成功した(ニュースリリース)。
蛍光タンパク質は,オワンクラゲから最初に発見された緑色蛍光タンパク質(GFP)およびその類縁分子の総称で,大きさおよそ4nm,成熟の過程で自身の3つのアミノ酸が化学変化を起こし明るい蛍光発色団へと変化する。生体内の細胞や分子を追跡したり,局所環境センサーを作ったりすることが可能になる。
また,蛍光タンパク質は多様な光学特性を示すことでも知られ,例えば,フォトスイッチングという現象を使うと,蛍光顕微鏡の空間解像度を格段に良くすることができる。
今回,研究グループは,金薄膜に蛍光タンパク質を固定化し,±1~1.5V程度の電圧を溶液・金属膜間に印加することによりフォトルミネッセンスが最大1000倍以上のコントラスト比で変調される現象を発見した。またこの原理に基づいた,大きさ約0.5ミリのセグメントディスプレーの試作と動作に成功した。
基礎医学・生物学研究で広く使われている蛍光タンパク質の性質は,溶液や細胞内環境において詳しく調べられてきたが,今回,金属―溶液の界面という環境において,新たな一面を示すことが明らかになったという。
今回の成果は,現状での表示装置としての性能は既存技術に比べれば動作速度や安定性の点で及ばないものの,研究グループは今後,電気制御メカニズムの詳細が明らかになれば,蛍光タンパク質の利用は,分子センサー素子など,従来の分野を超えてより多様な広がりをみせる可能性があるとしている。