【OPIE’19】巨大望遠鏡向け光学技術が結集

光技術展示会「OPIE’19」は4月24日,パシフィコ横浜にて開幕した。光学関連分野が横断的に集合する本展示会において,今回特に存在感を放つのが欧州ESAが建設を進める超巨大光学望遠鏡,European Extremely Large Telescope(E-ELT)や,国立天文台らのプロジェクトThirty Meter Telescope(TMT)に用いる鏡を製造するメーカーだ。

国立天文台(ブースNo.C-33)らの国際プロジェクトが建設を進めるTMTの主鏡はその名の通り直径30mあるが,これは対角1.44mの六角形の鏡を492枚組み合わせることで巨大な1枚鏡となっている。

この鏡は遠方からのわずかな光を高精度に集光するため,気温による形状変化をなるべく抑えられる素材でできている。具体的には,正の温度膨張を持つガラスと,それを打ち消す負の温度膨張(熱すると縮む)を持った特殊な材料を混ぜた素材が用いられる。このガラスを製造するのはオハラ(ブースNo.C-32)だ。同社の超低膨張ガラスセラミック「クリアセラム-Z」は,広い温度範囲でゼロ膨張特性を有し,耐熱衝撃性においても優れている。TMTの実績以外にも様々な望遠鏡や半導体露光装置への採用といった実績がある。また,複数のグレードを揃える。

こうしたガラスも超高精度の研磨技術が無ければ使い物にならない。クリスタル光学(ブースNo.C-29)は,国内最大クラスとなるΦ400mmの鏡を形状精度212nmで研磨することが可能となった。これは人工衛星にも使える精度だといい,JAXAとも共同開発を進めているという。この加工を可能にしたのは国内唯一となる独カールツァイス製の超大型三次元座標測定器。3×6×2mのワークスペースを持つ同装置はもともと人工衛星のアライメントに使用されるものだという。



一方,E-ELTへ超低膨張ガラスを供給するのは独ショット。日本法人のショット日本(ブースNo.C-26)は,超低膨張ガラス「ZERODUR」による直径1200mmの巨大な天文光学用ミラーを展示する。
これは米NASAの人工衛星向けの開発用プロトタイプで,実際にはこの4倍のものを製造する予定だという。E-ELTの主鏡は,対角1.2mの六角形の「ZERODUR」による鏡を930枚組み合わせる。ショットはE-ELTの主鏡を含めた5枚の鏡のうち4枚を受注しており,直径4.25mの一枚ものの鏡を既に出荷している。

日本電気硝子(ブースNo.C-36)も超低膨張ガラス「ZERO」と,超低膨張ガラス同志を接着するための粉末ガラスを展示する。採用実績として半導体製造用のスケールなどがあり,そのほか高精度位置決め装置のキャリブレーション用にレーザーでパターニングするカスタムにも応じている。同社の超低膨張ガラスは,消泡にヒ素を使わないため環境性にも優れているという。

※4月25日 表記を一部修正しました

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