独ショットは,4月22日(月)~26日(金),パシフィコ横浜で開催される,光技術総合展示会「OPIE’19」の「宇宙・天文光学EXPO」に出展し,超低膨張ガラスセラミック「ZERODUR®(ゼロデュア)」等を展示する(ニュースリリース)。
この素材は極めて低い熱膨張係数を実現した製品で,温度変化による膨張はほぼ起こらない。この特性によって最高の精度が保証される点が評価され,チリのセロ・アマソネス山に建設中の超大型望遠鏡「Extremely Large Telescope(ELT)」の5枚の反射鏡のうち4枚に採用された。
この素材で作られた反射鏡基板は,一日の間に気温が変化しても変形しないため,天体観測時に安定して高品質な画像が得られ,望遠鏡向け反射鏡基板のスタンダードとして認められているという。同社はこの素材の加工技術を絶えず改良することで,数多くの地上望遠鏡や宇宙望遠鏡に採用された実績を有している。「宇宙・天文光学EXPO」の同社ブースでは,正三角形の格子状に加工されたアイソグリッド構造をもつ,この素材による軽量反射鏡基板のサンプルを展示する。
ELTはヨーロッパ南天天文台(ESO,European Southern Observatory)によって建設されており,ファーストライト(初観測)は2025年の予定。最新の光学設計による直径39mの主鏡(M1)を備えるELTは世界最大の望遠鏡で,従来の望遠鏡より15倍高い性能を発揮するという。太陽系外惑星を発見し,暗黒エネルギーやブラックホールについて研究を深めるという目標を掲げている。
同社は,ELTの主鏡(M1)を構成する798枚のセグメント鏡基板(および交換用セグメント鏡基板131枚),直径4.25mの第2反射鏡(M2)基板,直径4mの第3反射鏡(M3)基板および第4反射鏡(M4)基板を供給するとしている。中でもM2は,曲率が非常に大きく,厚さがわずか10cm,重さが3tという厳しい条件に応えた世界最大の凸面反射鏡。
同社はまた,超軽量かつ優れた安定性のある反射鏡基板も製造している。背面を格子状に切り出すことで,最大85%の軽量化を実現し,宇宙望遠鏡や衛星など向けに提供している。さらに,光学フィルター,光学ガラス,超薄板ガラス,孔開け加工薄板ガラスなど,高い均質性と精度を要求する宇宙用途向け光学機器に最適なガラス製品も展示する。
干渉フィルターと光学フィルターガラスは,高透過で,偏光効果がなく,光の角度にほとんど依存しないフィルターカーブをもつ。120種類を超える同社の光学ガラスは,高い均質性により,ガラス内での屈折率の変動幅を非常に狭くすることができるという。同社の超薄板ガラスは,厚さが25~100μmで,高い耐紫外線(UV)特性,耐衝撃性,耐スクラッチ性,曲げ強度などの特性を加えることによって幅広い用途に対応する。
また,孔開け加工薄板ガラス「FLEXINITYTM」は,精度の高い孔開け加工によって,電子機器のさらなる小型化を実現に貢献するとしている。
※同社出展品ページ:http://www.opie.jp/2019/list/info.php?id=1150&ex
「OPIE’19」では国立天文台がハワイに建設中の大型望遠鏡「TMT」の主鏡を展示する。さらにこの主鏡を作製したオハラも出展することから,世界の2大光学望遠鏡の超高精度反射鏡技術が一堂に会する,またとない機会になる。