山梨大学と東ソーの研究グループは,水や有機溶媒に溶ける,新しい電気を通すプラスチック(導電性高分子)を開発し,電気伝導度1000S/cmの達成に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS) は,現在,最も成功した導電性高分子であり,帯電防止剤や固体電解コンデンサー,有機ELのホール注入層などに広く使用されている。
しかし,PEDOT:PSSには,①直径数十nmのコロイドからなり,完全には溶解していない②コロイド粒径以下の薄膜作製が困難③長期保存によりコロイドが凝集し,沈殿を生じる④電気伝導度は数S/cmと低く,高導電化には二次ドーパントの添加(溶媒効果)が不可欠という問題・課題があった。
これらは全て外部ドーパントであるPSSに起因し,PEDOTが溶媒に全く溶けないことが原因。そこで,研究グループは,PEDOTの側鎖に直接スルホン酸基を導入すれば,水溶性PEDOTが得られると考えた。
分子内にドーパントを有する導電性高分子を自己ドープ型といい,実際これまで多くの研究が報告されている。しかし,電気伝導度は最高でも10S/cm程度と低く,自己ドープ型の水溶性導電性高分子の高導電化は一般に困難であると考えられてきた。
今回,研究グループは,スルホン酸基を有するEDOTモノマーを新たに合成し,重合条件を最適化することで,優れた溶解性と高い電気伝導性をあわせ持つPEDOT(S-PEDOT)の合成に成功した。具体的には,従来の100倍高い1000S/cmの達成に世界で初めて成功した。電気がよく流れる理由を調べた結果,導電性高分子の長さ(分子量)が長いほど高い導電性を示すことを明らかにした。
研究グループは,今回の研究は,電気自動車やフラットパネルディスプレーで使用される有機エレクトロルミネッセンス(EL),次世代エネルギー素子である有機太陽電池など,軽くて柔らかく,安くて印刷可能な有機エレクトロニクスへの応用が期待できるとしている。