内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)が2018年度に終了したが,このプログラムで進められた光・レーザー関連研究開発プログラムの成果が一同に会した発表が,この3月8日に東京理科大学・森戸記念館において行なわれた。それは日本学術振興会 光エレクトロニクス第130委員会『光の日』公開シンポジウムで開催されたもので,多くの参加者が集まった。
当日は,同委員長で宇都宮大学特任教授の黒田和男氏が開会のあいさつを行なった後,4件のImPACTプロラム成果について,講演が行なわれた。
最初に登壇したのは,『イノベーティブな可視化技術による新成長産業の創出』でプログラム・マネージャーを務める科学技術振興機構の八木隆行氏。八木氏のプログラムでは,光音響イメージング技術の確立を目指し,そのために必要となるレーザー光源,センサアレイなどの要素デバイスを開発してきた。光音響イメージングは医療産業や美容・健康産業への応用が期待されている。
続いて登壇したのは,『セレンディピティの計画的創出による新価値創造』でプログラム・マネージャーを務める東京大学教授の合田圭介氏。このプログラムでは,膨大な細胞の中から高価値な細胞を高精度,かつ超高速で選別する革新的な顕微技術の確立を目指してきた。その間に多くの成果を発表しており,光を用いた細胞解析手法は多くの関心を集めている。
次に登壇したのは,『ユビキタス・パワーレーザーによる安全・安心・長寿命社会の実現』でプログラム・マネージャーを務める科学技術振興機構の佐野雄二氏。このプログラムではトレーラーに積載可能な超小型のX線自由電子レーザーの実現と,手のひらサイズのマイクロチップパワーレーザーの開発を進めてきた。マイクロチップレーザーでは,すでに参画企業より製品化が発表され,今春にも販売が開始されている。一方,X線自由電子レーザーはレーザープラズマ加速技術が進展しており,その要素技術が確立されている。パイロットラインは播磨のSpring8に隣接して設置されている。
最後に登壇したのは『量子-古典クロスオーバーの物理とコヒーレント・イジングマシン』でプログラム・マネージャーを務める科学技術振興機構の山本喜久氏。このプログラムでは光パラメトリック発振器を用いた量子ニューラルネットワークの確立を目指し,ソフトウェアとハードウェアの両面より研究開発が進められてきた。
今回のシンポジウムでは,これらImPACTプログラムの成果が今後どのように持続していくのかなどについても触れられた。また,招待講演ではジャーナリストの西村吉雄氏が登壇し,『電子立国凋落に学ぶ科学技術政策のあり方』と題する講演を行なった。この後,講師陣によるパネルディスカッションが行なわれ,特に光エレクトロニクスの可能性と日本の科学技術政策の在り方が議論され,シンポジウムは終了した。