大日本印刷(DNP)は,人の在室状況や会話など,空間内のセンサーで収集した情報に合わせて,壁や天井などの部材自身が部屋の光の色を変えたり,音を発したりするシステム「次世代ステルス空間」を開発した(ニュースリリース)。
近年,各種のセンサーによって,室内での会話の内容からコミュニケーションの状況など,さまざまな情報をリアルタイムに把握する事が可能となっている。収集した情報は,照明や空調,音響などの設備機器にフィードバックする事ができるが,従来の機器が見える設置形態では,その存在自体が空間内の違和感の対象(ノイズ)と感じてしまい,人の自然な行動を促すにあたっての阻害要因となっていた。
そこで同社は,光や音を発する機器を壁や天井などと一体化させ,機器の存在を意識させずに,室内の状況に合わせて光の色を変えたり,音を発したりすることで,人の自然な行動を促す「次世代ステルス空間」を開発した。
これは,人の五感が受け取る光や音などを,照明やスピーカー等の従来の機器からではなく,あたかも空間を構成する壁や天井等の部材から発するシステム。人の動きや声のトーン,温度や湿度,二酸化炭素濃度など,刻々と変化する空間内の状況を各種のセンサーで感知し,場の状況に応じて,機器と一体化した壁や天井が光の色や明るさを変え,発する音の内容や大きさなどを最適化。それにより,その空間にいる人々が次に取るべき自然な行動を促す。
壁や天井などの空間を構成する部材が機器と一体化したステルスな(隠された)状態であるため,機器がアクティブに作動していない時は,空間の表層を彩る木目などの建装材として機能する。
プロトタイプでは,村田製作所の会議空間のコミュニケーション状況を可視化するセンシングデータプラットフォームと,日建設計とDNPの共同開発によるフルカラーLED照明一体型壁装材を連動させ,空間の状況に応じたインタラクティブな光の変化を実現した。
会議の参加者に対して,参加者相互のコミュニケーションの状況という目に見えない情報を,光の色や明滅などの動きによって可視化し,次に取るべき自然な行動を促すことで,空間自体が質の高い会議をファシリテート(活性化)するとしている。
DNPは,オフィスやホテル,住宅や店舗,教育施設や医療・介護施設などに向けて,可変する建装材と各種センサーを組み合わせたハードウェアと,制御プログラムや操作インターフェイスなどのソフトウェアをパッケージ化したシステムとして「次世代ステルス空間」を提供していく。将来的には,利用履歴を使ったコンサルティングなどのデータビジネスの展開も目指すとしている。