内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)が第1期の研究開発を終える。このプログラムでは11課題に取り組み,そのうち,光・レーザーに関わる研究開発も重要なテーマとして推進されてきた。特に3Dプリンティングとコーティング技術で,レーザーの活用により,機能性付加技術や革新的な生産技術の確立が図られてきた。
この2月20日,21日の2日間,SIPの研究成果報告の場として東京ドームシティ(東京・水道橋)においてSIPシンポジウム2018を開催。第1期で取り組まれてきた研究成果の展示に加え,2018年度からスタートしている第2期研究開発分野の紹介が行なわれた。
今回の研究成果展示で注目したのは,革新的設計生産技術プログラムの中で取り組まれてきたレーザーコーティング技術だ。大阪大学接合科学研究所・教授の塚本雅裕氏を中心とする研究グループは,産学官連携で実用化を強く志向しながら研究・開発を進めてきた。
塚本氏ら研究グループがアプローチとしているレーザーコーティング技術は,複数のレーザー光源を用いて粉末材料を積層させていくもので,母材への溶け込み率を極端に抑え,スパッタレスで複層していく。
SIP開始から2年目には,レーザーコーティング用マルチビーム加工ヘッドを工作機械メーカーのヤマザキマザックが採用され,実用化された。また,最近では青色レーザーを搭載した複合加工機を開発した。
塚本氏ら研究グループは青色レーザーの加工応用の可能性にも注目し,研究開発を進めており,近赤外光と青色光を組み合わせたマルチビーム制御技術も確立している。300Wの近赤外マルチビーム加工ヘッドを搭載したものでは,この4月に村谷機械製作所が『ALPIONシリーズ』としてシステムの販売を開始する。
SIPは第2期がスタートするが,その中で『光・量子を活用したSociety5.0の実現化技術』の研究開発テーマが盛り込まれている。製造現場ではIoTやAIを導入し,さらにレーザーをものづくりに活用していく機運が加速度的に高まっているという。
一方で,CFRPや自動車のEV化による高反射材料,微細構造物への加工要求も高まっていることから,レーザー光源と周辺技術の開発はより重要度を増すものと見られている。今後の開発動向が注目されるところだ。