兵庫医科大学と関西学院大学の研究グループは,裂孔原性網膜剥離に対して硝子体手術を行なった患者の手術後にみられる網膜外層の皺襞(シワ)を定量的に解析し,この皺襞が,術後の後遺症である視界のゆがみ(歪視)に影響を与えていることを明らかにした(ニュースリリース)。
裂孔原性網膜剥離は,加齢などに伴う眼球内の変化により網膜に孔が開いてしまい,目の中にある水がその孔を通って網膜の下に入り込み網膜がはがれる疾患で,早期に手術をしないと視力は回復しない。
硝子体手術では眼球中にガスを入れてはがれた網膜を押さえ,レーザーで穴を防いで元の状態に戻すが,網膜を戻して視力を回復させることが目標で,術後の歪視については十分な理解がなされていなかった。
研究の対象となったのは,2016年10月から2017年8月までに兵庫医科大学病院で裂孔原性網膜剥離の硝子体手術を受けた25歳から71歳までの33名の患者。手術後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月後にenface OCT(光干渉断層計)で撮影した眼球断面画像やM-CHARTSテスト結果などの検査データを使用して調査が行なわれた。
その結果,網膜剥離の手術後,すべての患者の網膜外層に皺襞ができており,皺襞が歪視に影響することが判明した。皺襞があることを数値で証明したのは初めてのことだという。
研究グループは,今後,皺襞を減らし,歪視になりにくいようにするにはどうしたら良いのか,実用臨床的な側面も研究していくとしている。