大阪市立大学は,アジア太平洋トレードセンター(ATC)にて,「視覚障がい者の歩行を案内する車輪付き杖装置」の実証実験を行なった(ニュースリリース)。
今回使用した車輪付き杖装置は,車輪の付いた杖型の視覚障がい者向けの歩行者案内システムで,杖の先端に車輪,センサー,コンピューターが付いており,先端の車輪を接地させたまま杖を介して装置を押して歩行することで,あらかじめコンピューターに設定された車輪が操舵を行ない,歩行者を案内する。
今回の実証実験は,実運用に向けた課題を探すことを目的に,不特定多数の利用者が行き交う公共空間で実施。昨年度に引き続き2回目となる。昨年度は目が不自由でない人を対象にしていたが,今年度は視覚障がいがある13名を対象に,ステアリングなどの案内意図が利用者に正しく伝わり,装置が案内する軌道を安全に追従できるかの検証を行なった。
検証の結果,装置に慣れるまでは蛇行してしまう被験者もいたが,ほとんどの被験者が設定したゴールまで完走できた。またセンサーを利用してブレーキをかけることにより周囲の歩行者との接触を避けたり,自動ドアが開くのを待ったりすることもできた。
しかし,案内経路から大きく逸れてしまった被験者もいたこと,装置に何回か不具合が発生したことなど,実運用に至るまでに多くの改善も必要であることがわかった。また,今回は歩行者が比較的少ない時間帯に行ない,実験関係者が何人も同行していたため周囲の歩行者が近づくことがもともと少なかったこともあり,さらに多くの検証が必要になるという。
研究グループが実験後に行なった聞き取りでは,「早く日常で使えるようにしてもらいたい」といった要望や,「もう一回り小さくしてほしい」「音声案内も同時に行なってほしい」「階段で持ち上げて運ぶには重すぎるのでエスカレーターでも使えるようにしてもらいたい」などの利用を想定した意見があった。
研究グループは,今回の結果からわかった課題を一つ一つ解決し,安心して安全に使用できる装置の開発に真摯に取り組んでいくとしている。