大阪府立大学は,金ナノ粒子(AuNP)と植物由来セルロースナノファイバー(CNF)の自発結合を利用して,金の5倍の引張強度を持つ金箔の開発に成功した(ニュースリリース)。
フレキシブルデバイスを構成する配線や電極として,金属,ナノカーボン,および導電性ポリマーなどの導電材料が利用されている。安定した電力供給と堅牢な計測を実現するためには,導電性のみならず,強度や柔軟性などの機械特性や化学安定性,生体適合性が重要となる。
それらの特性に優れた金は,生活のさまざまな分野で使用されているが,高価であるため薄膜やめっき技術により使用量を低減化する工夫がなされている。通常,ニッケルなどの金属層の上に金めっき層が形成されるが,金属の積層化は基材の柔軟性を制限するものであり,酸化によるニッケルイオンの溶出は金属アレルギーの原因ともなる。
今回,研究グループは,化学安定性や導電性に優れた金,特にナノメートルサイズ化したAuNPを導電因子として,絶縁性CNFに結合することで,柔軟で機械強度に優れた金箔を形成することに成功した。
この金箔は,有害物質を用いることなく,金ナノ粒子とセルロースナノファイバーの分散液を混ぜてろ過,乾燥するだけで簡単に作製することができ,金含有量13vol.%で金属的な導電性を示した。また,水で湿らせた2枚の金箔を貼り合わせるだけで接合や修復ができる。
この技術は,他の金属ナノ粒子,量子ドット,およびカーボンナノ構造などの様々なナノ材料の薄膜化に適用可能だといい,研究グループでは,今回開発した金箔がフレキシブル配線や電極として,実装や電池,センサーの形成において有用な材料となり,電子ペーパー,電子スキン,およびスマートテキスタイルなど次世代デバイスへの展開が期待できるとしている。