京都大学,スペイン・アンダルシア天体物理学研究所を中心とする研究グループは,ガンマ線バースト「GRB 171205A」を引きおこした極超新星「SN 2017iuk」に光の速度の30%にも達する超高速成分が付随したことを発見した(ニュースリリース)。
宇宙には超新星爆発よりも極限的な爆発現象が存在する。その代表的なものが(ロング)ガンマ線バースト。数秒~数十秒程度の短い期間に,可視光よりもエネルギーの大きな(波長の短い)電磁波であるガンマ線を大量に放出し,ガンマ線で放出するエネルギーだけでも超新星の全エネルギーに匹敵する。
また,一部のガンマ線バーストは超新星を伴って現れることが知られている。その超新星は通常の超新星よりも短波長側に青方偏移した,幅の広い吸収線を持つスペクトルを示すことがわかっている。これは高速膨張する超新星放出物質により作られる性質であり,通常の超新星の10倍以上の爆発エネルギーを持つと解釈されている。そのように巨大なエネルギーの超新星爆発は「極超新星」と呼ばれる。
今回,研究グループはスペインの10メートル・カナリア大望遠鏡(GTC),南ヨーロッパ天文台がチリに所有する8メートル・超大型望遠鏡(VLT)を用いて,「GRB 171205A」の発見直後からの追観測を行ない,爆発当初から極超新星由来の可視放射が発生していること,最初の数日間に確認されたスペクトルがこれまで知られていた極超新星とは大きく異なることを発見した。
このスペクトルの理論解析の結果,極超新星には光速の30%以上に達する高速成分が付随すること,同時にこれが爆発の際に作られた鉄などの重い元素に満たされていることがわかった。これは,極超新星が光速に近いジェットにより引き起こされる重い星の爆発であり,このジェットが十分に減速されずに星を突き抜けた場合にガンマ線バーストが発生すると考えられるという。
研究グループは,今回の研究により,ガンマ線バーストと極超新星の爆発機構の理解が大きく進展するとともに,爆発天体現象を理解する上で爆発直後からの観測の重要性が示されたとしている。