オリンパスは米南カルフォルニア大学(USC)と共同で,大腸がん患者から作成した細胞モデルを3次元解析することに成功した(ニュースリリース)。
がん医学において遺伝的研究が進んでおり,何百もの遺伝子が,がんの発病・進行に関係していることや,遺伝子発現パターンは個人によって異なることがわかっている。そのため,抗がん剤を汎用的に投与する治療法ではなく,多数ある抗がん剤の中から個人に最適な治療薬を選択して投与するプレシジョン・メディスンの検討が進められている。
将来的には患者からがん細胞を採取し,遺伝子情報や環境,生活様式などから複合的に最適な治療方法を選択できるようにすべく,研究が進められている。
オリンパスは2017年3月より,USCとパートナーシップ契約を結び,プレシジョン・メディスンの実現に向けた共同研究を実施している。共焦点レーザー走査型顕微鏡「FLUOVIEWFV3000」や3次元細胞解析ソフトウェア「NoviSight」を提供し,USCが取り組むがんの予防・診断・治療に関する研究課題をイメージング技術により解決するとしている。
具体的には,患者由来の細胞モデルを3次元化して用いることで,2次元培養した細胞を使う薬効試験と比較し,抗がん剤の生体内作用をヒトの体内に近い状態で再現できるという。これにより,より正確な薬効評価が可能になる。3次元細胞解析など高レベルの解析技術で,がん患者の細胞で起こる複雑な生体内作用を解析して,高密度な情報を提供することで研究をサポートする。
研究グループは,今回の解析を共同研究の第1フェーズとして,今後第2フェーズに移行し,多数の患者由来の3次元細胞モデルから多面的にデータを取得し,抗がん剤を評価する有効な手法の確立を図る。将来的には,がん治療の過程で患者から検体を取得・分析し,個人最適な治療薬や治療方針を決定するプロセスの確立を目指すとしている。