富士キメラ総研は,世界の自動車メーカーが開発に注力しているレベル3(条件付き運転自動化)以上の自動化を実現する自動運転・AIカーの市場を調査し,その結果を報告書「2019自動運転・AIカー市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,自動運転・AIカーの市場は,2017年に世界で初めてレベル3相当の自動運転を実現した車両がAudiとGMから発売され,立ち上がった。自動車メーカー各社は限定条件下で運転機能をシステムに委ねるレベル3やレベル4(高度な運転自動化)車両の開発計画を発表している。日系自動車メーカーでも自動運転車両の開発が活発化しており,大手各社は2020年に高速道路や自動車専用道路におけるレベル3車両の実用化を目指しているという。
法規制やインフラ整備,社会における受容性の醸成,また,多数搭載されるセンシング機器や高額な半導体のコストダウンといった課題はあるものの,レベル4車両の実用化も身近なところまできており,市場は今後確実に拡大するとして,2040年には4,412万台,世界自動車販売台数の33.0%を占めると予測する。ただし,90%以上がレベル3車両で,レベル5(完全な運転自動化)車両は0.6%程度とみている。
自動運転技術の発展は自動車メーカーだけでなく,ITS機器メーカーやセンシング機器メーカー,半導体メーカー,AIベンチャー,データセンター事業者など,多くの企業がビジネスチャンスととらえており,この分野に注力している。また,自動運転車両の開発でもこれまでこの分野には関連性の薄かった異業種間で連携や共同開発が行なわれている。
自動運転・AIカーの投入で進んでいるのはEU市場。NAFTA市場にも一部投入がみられるが僅少で,顕在化するのは2019年とみる。同時に中国市場も立ち上がる。日本はその翌年の2020年頃の市場投入を予想する。
EUは他の地域に比べて環境保護要求の高い地域。環境にやさしいとされていたディーゼル車が多い地域であったが,2015年の排ガス不正を受けてディーゼル車禁止地域が広がっている。早くからMaaS(Mobility-as-a-Service)に取り組んでいる欧州自動車メーカーはMaaSとの親和性が良いEVなどへの急転換を図っている。同時にMaaSと連動した自動運転車両やMaaS車の普及を進めている。
NAFTAの移動手段は自動車が主体であり,乗車する時間は長い。そのため自動運転車両についてもニーズは高く,EUに次いで早期に市場が形成されるとみる。NAFTAでは自動運転車両の,一般ユーザーまでの早期普及が求められており,2020年頃のMaaSと連動した市場投入が顕在化すると予想する。
中国では新技術に対する官民の取り組みは積極的で,EVについては補助金政策が行なわれており,AI化についてもBaiduなどのITメーカーが積極的に取り組んでいる。そのため自動運転車両の市場投入は欧米に次いで早いとみる。
日本ではトヨタや日産が東京五輪に合わせてレベル3車両の実用化を目指している。レベル4以上の車両の実用化についてはインフラの整備や法規制整備などの課題があることから,本格的な投入時期としては2030年代となるが,市場はまだ非常に小規模にとどまるとみる。自動運転車両を普及させるには,官民一体となったインフラ整備や法規制整備といった課題解決,自動運転車両を使ったビジネス形成などに取り組む必要があるという。
注目市場であるLiDARの2018年の市場は1万個を見込む。自動運転システムの高精度化に向け,リアルタイムの空間情報検知にはLiDARが不可欠とみて開発に乗り出す自動車メーカーやTier1が多い。2025年頃に製品化,量産されるとみることから,それに伴い市場は本格化すると予想する。
一方,24GHz帯のミリ波レーダーはEUをはじめとして2020年代に法制度によって使用が制限され,距離分解能を高めた79GHz帯のミリ波レーダーに置き換わっていくことから,数量,金額ベースともに市場は縮小していくとみている。