阪大,原子核内で相互作用する陽子中性子対を観測


大阪大学,中国北京航空航天大学を中心とする国際共同研究グループは,原子核から中性子を抜き去る実験手法(一中性子移行反応)を用い,酸素原子核内に強く相互作用している陽子中性子対を捉えることに成功した(ニュースリリース)。

物質を構成する原子の中心には原子核がある。原子核は陽子と中性子という2種類の粒子(核子)からできており,これらの粒子間に強い力(核力)が働く。核力の中には,主に陽子と中性子の間に働き,2つの棒磁石の位置関係とそれぞれのNS極の方向によって働く力が変わるのと同じように,陽子と中性子の相対位置及びスピン向きによって性質が異なる力成分が存在し,テンソル力と呼ばれる。

テンソル力は主に湯川秀樹博士が予言したパイ中間子の交換によって生じる力で,原子核を束縛させる決定的な役割を担うことが知られているが,原子核構造にどのように影響するか知られていなかった。原子核内の核子は殆どの場合他の核子から平均化された力を受けながら,自由に動いて(自由粒子運動をして)いるため,通常の散乱実験では殆ど自由粒子運動をしている核子しか捉えない。

今回,研究グループはテンソル力が高い相対速度(相対運動量)を持つ陽子中性子対をもたらすという性質に着目し,テンソル力効果が特に顕著と予想される領域において実験を行ない,強く相互作用する核子対を観測する新たな実験手法の開発に成功した。

実験では,光速の70%の速度まで加速された陽子ビームを氷標的に入射して標的内の酸素原子核から1個中性子を抜き去り,ビーム入射方向付近に放出される重陽子とその反対方向に飛び出てくる陽子を同時に測定した。その結果,抜かれた中性子と強く相互作用していた陽子を観測することに成功し,酸素原子核におけるテンソル力の効果を示す証拠を得たという。

この研究成果は,酸素原子核におけるテンソル力の効果を実証したと同時に,テンソル力と原子核のエネルギー準位との結びつきを初めて示したもの。陽子と中性子の数が大きく異なる原子核,特に不安定核ではテンソル力効果が安定核と大きく異なり,また,テンソル力効果によって原子核魔法数が変化することが予想されている。

今後,この手法を不安定核への応用により,テンソル力の役割について定量的に理解し,エネルギー準位や魔法数を始めとする原子核構造,そして中性子星などの天体の内部構造の解明につながることが期待できるとしている。

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