山口大ら,先端バイオ研究向け高校理科教材を開発

山口大学と科学技術振興機構(JST)は,最先端のバイオ研究の核となる技術である動物細胞への遺伝子導入と遺伝子発現を観察できる教材キット「昆虫細胞 遺伝子導入・遺伝子発現観察キット」を開発した(ニュースリリース)。技術移転機構である山口ティー・エル・オーが全国の高等学校・中学校等への頒布を開始する。

高等学校生物の教科書では,「細胞の構造」「真核細胞と原核細胞」「細胞小器官の構造」「タンパク質の構造と機能」「細胞分裂と核」といった「細胞」とその構成成分に関連した多くの内容が解説されている。しかし,これらの教育内容を高等学校・中学校等の先進的な研究施設や実験装置が整備されていない教育現場において,実験を通じて直接理解を深めることはこれまで困難であった。

今回,研究グループが開発した教材キットは,動物細胞への遺伝子導入と遺伝子発現の観察を行なうことができる。特長は,1.中学,高校の既存の設備で実施可能,2.中等教育のカリキュラムにあわせた内容・実験時間,3.教材として利用可能な安価での提供。

実験の内容は以下の通り。
[1]動物細胞の一種である昆虫培養細胞(カイコBmN4細胞)の培養法
[2]カイコBmN4細胞へのGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子の遺伝子導入による,タンパク質発現の可視化法
[3]核局在性DsRed(赤色蛍光タンパク質)を用いたカイコBmN4細胞の細胞分裂時における核の挙動の可視化法

GFPとDsRedの蛍光観察には通常高価な蛍光顕微鏡が必要。この実験では,青色LEDライトと500nm以下の光をカットするカットフィルターを用いた簡易蛍光顕微鏡を使用するため,GFP,DsRed発現細胞の観察のために蛍光顕微鏡を使用する必要がない。

これらの工夫により,この教材では通常の高校に設置された顕微鏡と青色LEDライト,カットフィルターのみでBmN4細胞で発現した蛍光タンパク質の観察が可能となっている。

細胞に関する研究は世界のバイオ研究の核となる。この教材は,日本が世界に誇る先端技術の原理やその利用法を学ぶ機会を1つの教材により提供することができる実験教材であり,その教育効果は極めて高いと考えられる。研究グループは今後,この教材キットが全国的に理科教育の裾野を広げる製品として,普及定着することが期待されるとしている。

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