東北大,ミリ秒オーダーの高空間分解能X線CTに成功

東北大学は,高輝度光科学研究センターと共同で,高感度なX線イメージング法である回折格子干渉法と,強力な白色放射光により,世界最高となるミリ秒オーダー撮影時間(空間分解能約20µm)で有機材料のX線CT(コンピュータトモグラフィ)に成功した(ニュースリリース)。

X線CTをはじめとするX線イメージングにおいては,一般に高い空間分解能を追求すれば時間分解能を犠牲にしなければならないという,いわゆるトレードオフの関係がある。最先端の研究の現場では,両者を同時に,すなわち絶対的な感度をいかに向上させるか,ということが永遠の研究テーマとなっている。

感度を絶対的に向上させる方法として,1990年代半ばから注目を集めているのが,X線の位相を利用したX線位相コントラストイメージングと呼ばれている方法。X線の位相を利用することにより,レントゲン写真のようにX線の吸収を利用する場合に比べて,原理的に数桁の感度の向上が実現できる。

高速でX線CTを行なうには,高速で投影像を取得することが不可欠。そのため,従来は1枚の投影像からX線位相コントラスト画像を取得するフーリエ変換法という方法が用いられてきた。

しかしながら,空間分解能が空間搬送波(X線の位相の情報を運ぶ縞模様)の周期で決まってしまうという欠点があり,高い空間分解能が実現できなかった。また,画像検出器の空間分解能が有限であるため,空間搬送波が細かくなると,シグナル・ノイズ比の低い画像しか得られないことも問題だった。

今回研究グループは「縞走査法」と呼ばれる方法を,ミリ秒オーダーのCTスキャンに世界ではじめて適用することによって,フーリエ変換法の場合に比べて数倍程度高い空間分解能で,かつ数倍程度のシグナル・ノイズ比でX線CTの実現に成功した。

具体的には,4.43msの測定時間で有機物から構成される試料(木片)のX線トモグラフィに成功した。木片は有機物で構成されているため,X線の吸収が非常に小さく,X線の吸収を利用するCTでは定量的な再構成像を十分な画質で取得することが困難だが,縞走査法により取得したX線位相コントラスト像を用いることにより,画像検出器の空間分解能(約20µm)で,かつ高い感度で木片内部の密度分布が三次元的に描出できたという。

研究グループはこの研究により,軽元素から構成される試料のハイスループット3次元可視化や,ミリ秒時間分解能の4次元(3次元+時間)トモグラフィへの応用展開が期待できるとしている。

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