大阪大学,石川県工業試験場,村谷機械製作所は,直噴型マルチビーム式によるレーザーコーティング法を開発し,スマートフォン部品向け金型やマイクロドリルなど高精度な加工に対応できるレーザーコーティング技術を確立した(ニュースリリース)。
近年,付加価値の高い機能を必要な部分にのみ効率的に付与できる表面処理技術が重要視されている。しかしながら,肉盛溶接や粉体プラズマ溶接の場合には多量の入熱を必要とするため母材への熱の影響が大きく,母材が大きく歪んだりすることが問題となっている。
一方,溶射の場合には皮膜内部に空隙が多く残存することや母材との密着性が低く,使用中に剥がれてしまうなどの問題がある。そのため薄肉で微細な製品に適用可能な高精度なレーザーコーティング技術の開発が求められていた。
このような背景のもと,研究グループはスマートフォン部品向け金型やマイクロドリルなどへのレーザーコーティングの高精度化を実現するため,従来の1本のレーザー光で加熱溶融していたレーザーコーティングプロセスとは異なり,ヘッド中心から原料粉末を噴射し,そこに集光径の小さな複数のレーザー光を照射して溶融凝固させることで,薄くて微細な皮膜を狙った位置に正確に形成できる技術を独自に開発した。
噴射される粉末材料を直接加熱することで母材表面の溶融を必要最小限とし,希釈が少なく歪みの小さなコーティングができる。これに直交3軸に傾斜軸および回転軸を加えた5軸制御の自動ステージを組み合わせることによって,曲面形状への皮膜形成も可能となるという。
マルチビーム式レーザーコーティング装置専用の粉末供給機も開発した。これには粉末供給量をモニタリングする機能が付加されており,その値が設定通りになるようにバルブの開閉を自動制御することで,粉末供給量の安定性を向上させることができる。
研究グループはレーザーコーティングの高精度化を実現するための直噴型マルチビーム式レーザーコーティング技術の装置化にめどがついたとし,この装置を村谷機械製作所のレーザー加工機「ALPION(アルピオン)」シリーズに加え,2019年4月から販売を開始するとしている。