京都産業大学らの国際研究グループは,毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の母天体とされる小惑星フェートンの偏光観測を行ない,その表面の様子が通常の小惑星と大きく異なることを明らかにした(ニュースリリース)。
小惑星フェートンは,太陽に接近する軌道を巡っている小惑星の一つで,毎年12月に見られる「ふたご座流星群」の原因となる流星体(ダスト)の放出源と考えられている。しかし,どのようにして小惑星フェートンから流星体が放出されたなど謎も多く,宇宙航空研究機構(JAXA)等が進めている将来の宇宙機探査計画での探査候補天体にもなっている。
この小惑星は地上の望遠鏡から観測しようとしても,なかなか観測条件が良くなる事は無く(タイミング的に夜間の観測が十分に出来ないため),これまであまり研究が進んでいなかった。しかし,2017年12月には小惑星フェートンが地球に接近し,明るく観測できる貴重な観測機会があった。
研究グループは,国立天文台・三鷹キャンパスの50cm公開望遠鏡で,小惑星フェートンの偏光撮像観測を集中的に実施した。偏光は太陽の光を小惑星フェートンが反射する際に生じる。その偏光度を調べることで,小惑星フェートンの表面がどのような状態なのかを明らかにする手がかりが得られる。その際,太陽・フェートン・地球が成す角(位相角)の広い範囲にわたって観測することが,その表面の様子を知るためには重要となる。
2017年に実施した観測の結果,小惑星フェートンの表面は,他の普通の小惑星とは大きく異なっており,非常に高い偏光度を示すことを明らかにした。このことにより,小惑星フェートンの表面は,比較的大きなダスト粒子で覆われている,あるいは他の小惑星に比べて特異な反射特性を持つ可能性があるという。
先行研究でもこうした高い偏光度が報告されているが,今回の緻密な観測によって,その結果をはっきりと確認することが出来た。また,これまでに観測されていない小さい位相角での偏光度も得られており,他の研究グループの結果と合わせて,小惑星フェートンの表面に反射特性のムラがある様子を示した。2017年12月はフェートンの観測好機だったことから,今後報告される結果と合わせて,更に詳細な研究が可能になると期待されるとしている。