慶應義塾大学と堀場アドバンスドテクノは,リアルタイム測定ができる高感度な有効塩素濃度センサーシステムを開発した(ニュースリリース)。
有効塩素濃度の測定には従来,大きく分けて「吸光光度法」と「電気化学測定法」の2種類が用いられている。「吸光光度法」は,試薬を加えてサンプル溶液を発色させ,吸光光度計を使って特定の波長の吸光度から有効塩素濃度を求める方法で,連続測定には適さない。
「電気化学測定法」は連続測定できるが,一般的な金,白金,炭素繊維等の電極では,次亜塩素酸を検出することが困難なため,次亜塩素酸イオン濃度と次亜塩素酸濃度の和である有効塩素濃度を求めることができない。また電極表面に塩素の酸化力によって酸化物が形成されるため,研磨洗浄などの定期的なメンテナンスが必要だった。
研究では,ダイヤモンド電極が有効塩素濃度測定に有用であることを見いだし,さらに電極を最適化することで,これまで市販のセンサーでは実現できていなかった,高感度,リアルタイムかつメンテナンスフリーな有効塩素濃度センサーを開発した。
このセンサーでは,ダイヤモンド電極を作用極としてサンプル溶液に電圧を加えて,流れた電流を測定することにより有効塩素濃度が得られる。
検討の結果,次亜塩素酸イオン濃度を測定する場合は印加する電圧を+1.45Vに,次亜塩素酸濃度を測定する場合は印加する電圧を約-0.4Vにすれば,最も高感度に測定できることが分かった。
溶液中での次亜塩素酸イオンと次亜塩素酸の割合は,溶液のpHによって変化するが,電位窓が極端に広いダイヤモンド電極では,両者の濃度をいずれも測定できるため,溶液のpHによらず測定結果を足し合わせることにより溶液中の有効塩素濃度を求めることができる。
さらに,ダイヤモンド電極は表面の安定性が高く,腐食や酸化物の形成などが生じないため,電極表面の定常的なメンテナンスが不要。
開発したダイヤモンド電極を用いてフロー系のセンサーシステムを製作し,条件を最適化したところ,良好に測定できることが分かった。さらに,従来の測定法に比べ,広い濃度域で高精度に,有効塩素濃度を測定できたという。
この有効塩素濃度モニターは,食品業界で食品や調理機器の殺菌に使われる次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム溶液の有効塩素濃度をリアルタイムに計測できる。次亜塩素酸水生成装置などへの組み込みや,野菜の洗浄槽などに取り付けることで,次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度や,殺菌に必要な有効塩素濃度を常時監視することができるとしている。