九州大学の研究グループは,フィガロ技研と共同で半導体ガスセンサーのVOCガス検出下限濃度を従来に比べ,約1桁低減することに成功した(ニュースリリース)。
IoT社会では,各種センサーとインターネットが繋がり,離れた場所の情報をインターネット経由で収集でき,医療分野においてもこの技術の応用が大いに期待されている。
利用方法としては,糖尿病等の生活習慣病から癌等の重大疾病を簡易呼気分析により診断,各個人の情報を医療機関で収集すること等が予想される。
しかしながら,呼気分析に対応するためには0.1ppb(100億分の1)レベル,もしくはそれ以下の濃度のVOCガスを検出する必要があり,従来のガスセンサでは困難だった。
同大では,これまで確立したガスセンサーの設計指針を活用することにより,パラジウム触媒を担持した酸化スズナノ粒子の凝集状態を精密に制御することで,数ppbのVOCガスを検出することに成功していた。
今回,同様の材料を瞬時加熱-冷却が可能な小型ガスセンサー素子に搭載,センサのON/OFFを繰り返しながら動作させることで,VOCガスをセンサ膜の内部に高濃度で導入することを提案した。
この手法により,従来の検出限界より1桁低い0.2ppbのトルエンガス(VOCガスの一種)が検出可能であることを見出した。研究グループはこの手法について,材料およびデバイス設計の観点から更なる改善の余地があるとしながら,近い将来,人間の鼻に匹敵する,数ppt(1兆分の1)のガス検出が期待できるとしている。