理研ら,AIによる有機分子の設計と実証に成功

理化学研究所(理研),物質・材料研究機構らの研究グループは,人工知能(AI)を用いて,所望の特性を持ちかつ合成可能な有機分子の設計に成功した(ニュースリリース)。

近年「深層学習によるAI技術」が飛躍的な発展を遂げ,多数の新しい分子が設計されている。しかし,このようにして設計された有機分子が実際に合成できるのかについては,これまで検証されていなかった。一方,「量子力学に基づいた分子シミュレーション技術」もさまざまな有機分子の性質や安定性をある程度の精度で予測できるようになっている。

研究グループは今回,所望の量子力学的な性質を持ち,かつ安定な有機分子を設計するために,深層学習によるAI技術と量子力学に基づいた分子シミュレーション技術を組み合わせた。

有機ELや有機太陽電池の製作においては,分子の吸収する光を自在に制御することが重要となっている。研究グループは,所望の波長の光を吸収する有機分子を設計し,それが実際に合成可能かを検証した。吸収波長は,紫外から可視光領域の200nm,300nm,400nm,500nm,600nmの5つとした。

設計方法としてはまず,データベースにある原子で構成される分子量400程度の13,000個の有機分子に関する情報(構造式)を入力し,RNNという深層学習によってあらゆる有機分子の法則を学習させた。次に,5つのそれぞれの吸収波長を持つ分子を「モンテカルロ木探索(MCTS)」で探索した。

さらに,MCTSにより探索された分子の性質と安定性を,量子力学に基づいた分子シミュレーション技術である「密度汎関数理論(DFT)」によって計算した。これにより,所望の吸収波長を持ち,かつ安定な有機分子の候補を自動的に計算機で見つけることができるという。

計算の結果,RNNとMCTSにより3,200個の分子が生成され,このうち86個がDFTにより予測された安定かつ所望の吸収波長を持つ分子だった。さらに,この86個の分子のうち6個は,過去に合成された報告があった。

これらの有機分子を実験で合成し,紫外可視吸収スペクトルを測定したところ,6個のうち5個が所望の吸収波長を示すことが分かった。このことから,今回設計した残りの80個の新しい有機分子も所望の光を吸収し,合成できる可能性があるという。

この研究成果により,例えば,太陽電池の集光材料,電気貯蔵材料,有機EL用の発光・ホスト材料などの有機エレクトロニクス分野における機能性分子の開発が加速するとしている。

キーワード:

関連記事

  • 左 従来の光トランシーバー搭載スイッチ図 右 CPO技術搭載スイッチ 

    KDDIとBroadcom、CPO技術の共同検証を開始 AIデータセンターの省電力化へ

    KDDIは米Broadcomと、AIの社会実装に向けてネットワークインフラ技術に関する提携を締結し、両社は光通信部品を半導体チップの近くに配置する「CPO(Co-Packaged Optics)」技術の共同検証を開始した…

    2026.10.26
  • 「エッジAI半導体を実現する3Dヘテロ集積技術」プロジェクトの対象技術と課題

    東北大、半導体3D集積の産学連携組織「T-CHIPS」発足 光チップの異種集積も視野

    東北大学は、半導体先端パッケージングと異種チップ集積技術の研究開発を推進するコンソーシアム「T-CHIPS」が発足したと発表した(ニュースリリース)。プロセッサーやメモリ、シリコンフォトニクスチップなど、異なる機能を持つ…

    2026.10.21
  • 光ファイバセンシングを活用した漏水位置特定システム

    NTT、光ファイバセンシングとAIで水道管の漏水位置を15分で特定

    NTTは、福岡市管工事協同組合と共同で、光ファイバセンシングとAIを組み合わせた水道管の漏水位置特定技術の実証に成功した。地下に埋設された給水管から生じる微弱な振動を光ファイバで検出し、AIで解析することで、水平誤差75…

    2026.10.21
  • 東大が挑むAI×先端レーザー加工 Photonics Innovation 2026 プレイベントを開催

    オプトロニクス社は、11月10日(火)~12日(木)にパシフィコ横浜で光技術展示会「Photonics Innovation 2026/パワーレーザーPlus 2026」を開催する。そのプレイベントとして、東京大学 物性…

    2026.10.09
  • 浜松ホトニクス、AI半導体向け倒立型エミッション顕微鏡を発売

    浜松ホトニクスは、AIチップレットやHBM(High Bandwidth Memory)を採用した2.5D/3Dパッケージなど、先進半導体パッケージの故障解析に対応する倒立型エミッション顕微鏡「iPHEMOS-DDX」を…

    2026.09.30

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア