矢野経済研究所は,2018年の車載ディスプレー関連部材の調査を実施し,前面板やOCA・OCR,車載用加飾フィルム,車載用光学フィルム,車載タッチパネルなど各部材のセグメント別動向,参入企業動向,将来展望を明らかにした(ニュースリリース)。
液晶パネル等の保護を目的として,車載ディスプレーには前面板が設けられている。車載用前面板は従来のカーナビゲーション(以下カーナビ)のほか,CID(Center Information Display)やRSE(Rear Seat Entertainment),クラスター(Instrument Cluster)などの車載ディスプレーの一台当り搭載個数が増えたことに加え,表示デバイスの操作ユーザーインターフェース(UI)として静電容量方式タッチパネル(TP)の採用が進んだことなどから,2017年の車載用前面板世界市場(メーカー出荷数量ベース)は前年比145.5%の2,755万パネルまで拡大したという。
車載用前面板は車載ディスプレーの市場拡大と連動しながら,2018年以降もガラスカバーや樹脂カバー,射出成形品いずれも市場成長が続くと予測する。
車載ディスプレーやTPの曲面・異形化に伴い,前面板にもデザイン性向上につながる曲面形状への対応を求める自動車メーカーのニーズが高まっており,ガラスカバーと樹脂カバーのほか,射出成形品などの曲面対応に向けた取り組みが本格化している。車載ディスプレーは従来のカーナビに加え,カーナビ機能を含めたCIDやDA(Display Audio),RSE,クラスター,HUD(Head Up Display),リアビューミラーなど搭載部位が増えつつあり,市場は拡大傾向にあるという。
これに連動し,前面板や車載ディスプレイ用各種光学フィルム,OCA・OCR,TPなどの主要部材の需要も拡大しており,需要獲得に向けた各部材・材料メーカーの間の競争が激化しているとする。
近年では,自動車メーカー各社による車内及び歩行者の安全確保に繋がる取り組みが進んでおり,自動車の誤作動防止や駐車支援システムなどに対応して簡便かつ瞬時に情報を把握できるように,車載ディスプレーの大画面化が進展している。
また,自動車メーカーからは,視認性向上のためスマートフォンなどの民生用機器と同等の高精細化や広色域化も求められているほか,搭乗者が車内にいる時間を快適に過ごせるようにカーインテリアデザインの統一感など,車内コックピットのデザイン性向上に関する要望も増えている。
車載ディスプレー関連部材メーカーには,車載ディスプレーの大画面化,高精細化・広色域化,デザイン性向上などに加え,さらに根幹である自動車の安全性確保と車室空間の快適性向上に的確にコミットした商品企画や商品開発,顧客提案が求められているという。
車載ディスプレーやTPの保護用として使用される前面板は,車載ディスプレーの市場拡大と連動しながら今後も市場成長が続くと予測する。車載用前面板はガラスカバーとシート状の樹脂カバーが現時点では主に使用されているが,近年,曲面形状にしたインモールド転写やインサートモールド(INS)による射出成形品の採用が拡大している。
曲面化への対応として,ガラスカバーは曲面ガラスカバー,樹脂カバーも熱曲げシートの開発が進んでいるが,優れた成形加工性による複雑な3D形状など様々なデザインへの対応や,加飾と同時にAG(Anti-Glare)やAFP(Anti-Finger Print)などの表面加工が可能なことなどから,車載ディスプレーやTP向け前面板としての成形品の採用は今後拡大していくと見る。
このようなことから,2020年の車載用前面板世界市場(メーカー出荷数量ベース)は4,390万パネルまで成長し,そのうち射出成形品は685万パネル(構成比15.6%)に拡大すると予測する。
車載用前面板は現在,単に車載ディスプレーやTPの保護というより,異形・曲面形状などのデザイン面から選択される場合が多いという。前面板メーカーには,自動車メーカーの設計自由度を広げ,コックピットのデザイン性向上に貢献できる製品開発が最も重要視される。
車室内コックピットのデザイン向上に繋がるという切り口で顧客ニーズを掘り起こし,デザイン性に価値を見出す前面板,あるいはディスプレー関連部材開発提案をユーザー側に訴求することも,自動車メーカーによる採用拡大の重要なポイントになるとしている。