理研ら,X線の2光子吸収分光法を実現

理化学研究所(理研),分子科学研究所,高輝度光科学研究センター,仏レンヌ大学らの研究グループは,X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」を用いて,物質がX線の光の粒(光子)を2個同時に吸収する2光子吸収を利用した新しい分光法「X線2光子吸収分光法」を世界で初めて実現した(ニュースリリース)。

「X線2光子吸収分光法」を実現するため,理研はX線の2光子吸収過程の観測に世界で初めて成功している。しかし,このとき利用したX線は,試料のゲルマニウム結晶を瞬時に蒸発させてしまうほど高強度だった。

今回,研究グループは,2光子吸収に使う波長のX線に対して1/2の波長のX線を13桁,1/3の波長のX線を8桁弱くする光学系を構築した。さらに,X線の強度を弱めると2光子吸収が起こる確率が急激に低下するため,微弱な蛍光X線を高感度で測定する装置も開発し,2光子吸収した原子から放出される「蛍光X線」を測定することに成功した。

これにより,試料が瞬時に蒸発するほどの高強度のX線が必要だったX線2光子吸収過程を,1万分の1以下の強度で観測できる方法を確立した。これによって,試料(銅)の状態を変化させることなくX線2光子吸収スペクトルを測定し,ありのままの銅の電子状態を調べることが可能になりった。また,物質が光子を1個吸収する従来の「X線吸収分光法」では見えにくかったd軌道の状態を,X線2光子吸収分光法では測定できることを示した。

従来の1光子吸収では見ることが難しかった、周期表上のチタン(原子番号22)から銅(原子番号29)までの遷移金属(チタン,バナジウム,クロム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,銅)を含む化合物には,高温超伝導体といった有用な機能を発現するものが多く見つかっている。しかも,それらの機能には,1光子吸収では見えにくいd軌道が深く関わっていると考えられている。

研究グループは,今回実現したX線2光子吸収分光による測定が,d軌道を調べる有効な方法として活用されると期待している。

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