京大ら,酸化ガリウムでノーマリーオフ型MOSFETを開発

京都大学と京都大発ベンチャーのFLOSFIAは共同で,新規材料によるパワーデバイスとして,コランダム構造の酸化ガリウム(Ga2O3)を用いた絶縁効果型トランジスタ(MOSFET)を開発し,ノーマリーオフ動作を実証することに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

省エネ社会の実現に向けて,パワーデバイス(電力変換に用いる半導体デバイス)の低損失化が期待されている。中でも,酸化ガリウム(Ga2O3)その最有力候補とされてきた。Ga2O3は結晶構造の異なる5つの結晶多形が知られ,そのうちでコランダム構造(α構造)が最も物性値がよい。

研究グループは,コランダム構造のGa2O3を用いた絶縁効果型トランジスタ(MOSFET)の開発に成功した。さらに,従来は実現不可能とされてきたGa2O3デバイスにおけるノーマリーオフ動作(ゲート電圧が0Vのときに電流が流れず,電圧を上げると電流が流れること)を実証することに成功した。

この研究成果により,電力変換器の小型化は数十分の一に及ぶことがあり,また,コスト低減効果は電力変換器全体の50%に及ぶことが期待されるという。安全・安心が求められる幅広い電源領域での適用が期待され,電気自動車や小型ACアダプタの普及を後押しすることが期待できるとしている。

今回の研究成果は,FLOSFIAのコランダム構造Ga2O3パワーデバイス「GaOTM」シリーズとして量産予定で,さまざまな電力変換器への搭載を目指す。

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