昭和大学と名古屋大学は共同で,人工知能(AI)による大腸内視鏡検査支援システムを開発した(ニュースリリース)。
大腸内視鏡検査は大腸癌による死亡を53%低減させる効果があるとされている。これは,内視鏡検査中にポリープ(前癌病変)・微小癌を切除することによって,進行癌になる前に治療できるからと考えられている。しかし,1回の検査で約26%もの微小ポリープが見逃されていること,医師の技量によって発見率・見逃し率が変わることも知られている。
研究グループは,73件の大腸内視鏡検査の動画997分・約1800万フレームを対象とした研究を実施。十分な経験を積んだ内視鏡専門医がこれらの膨大な動画について1フレームごとにポリープが映っている・いないの判定をした。このうちAIの学習に適していると判断された約20万フレームの動画を,ディープラーニングの一種である3次元畳み込みニューラルネットワークで学習した。
学習したAIで,AIが学習していない50病変の動画で性能テストをしたところ,94%(47病変)が検出可能だった。このテストに用いた病変の68%(34病変)が,従来のAIでは検出が難しいと考えられていた平坦なポリープだった。
このAIは,リアルタイム動作可能なソフトウェアとして実装されており,内視鏡検査中に病変を検知すると,内視鏡画面の隅の色を変化させたり,音を発したりすることで医師に注意を喚起する。現在は,学習画像を大幅に増加し,約280万フレームを学習したシステムで,すでに臨床研究を開始している。
このAIによって,ポリープや前癌病変・微小癌などの見落とし率が軽減されることが期待される。腫瘍性ポリープの見落としを1%減らすことによって,3%の大腸がんを予防できることが知られており,増加傾向にある大腸がんを予防できることが期待されるとしている。