市大ら,第5の分子間結合を発見

大阪市立大学とカナダ ブロック大学は共同で,溶液中の分子間に働く新しい化学結合,「多中心結合」を発見した(ニュースリリース)。

物質の高度な機能を制御するには,分子内に働く結合力だけでなく,分子間に働く化学力を理解し,物質設計などに利用する必要がある。これまで分子間力には4つの分子間結合(イオン結合,水素結合,ファンデルワールス力,電荷移動結合)が存在することが明らかになっている。

一般的な化学結合は,2つの原子間で2個の電子を共有することによって結合を生成するが,多中心結合では3個以上の原子間で2個の電子を共有する。今回観測した溶液中での多中心結合生成にいくつの原子が関わっているかは,Atoms-in-Molecules(AIM)法と呼ばれる理論解析手法を用いて解析を行なった。

AIM法では,Bond Critical Point(BCP)と呼ばれる,2個の原子間で電荷密度が極小となる点の電荷密度の大きさから,その原子間に働く相互作用の強さを推定する。

今回,トルエン溶液中を仮定したラジカル二量体の量子化学計算にAIM法を適用したところ,2つの分子間には14個(中心部分に4個,左右のウィングに5個ずつ)のBCPが存在することが分かり,非常に多くの原子が化学結合に関与する多中心結合を形成していることが分かった。

量子化学計算から得られた多中心結合の強度は15.2kcal mol−1で,実験で得られた11 kcal mol−1と近い値を示しており,量子化学計算が信頼性の高いものであることを示している。

今回の実験では,分子内の多数の原子上に平面非極在化して動き回る電子をもつ分子が面間を向き合わせると,溶液中においても高温領域まで安定に存在することができる2量体が形成されることが新たにわかった。

さらに,精密な量子化学理論計算を用いて実験データを矛盾なく説明した結果,一つの化学結合の形成にあずかる原子(中心)が多数存在して,溶液中においても強固な結合(多中心結合)が出来上がっていることを証明した。

今後さらに豊富な実例が現れ,電荷をもたない分子の多中心(原子)間に普遍的に働く,強い化学結合として認知され,電荷移動結合とともに,第5番目の分子間力として教科書などに記載されることが予想され,化学結合の深い理解につながるとしている。

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