沖縄科学技術大学院大学(OIST)らの研究グループは,夜行性の魚の脳が、生息環境である低照度条件にどのように適応するかを調査した(ニュースリリース)。
ほとんどの脊椎動物では,視蓋と呼ばれる脳内の領域が視覚情報を処理しているが,低照度の環境において視力を最大限活かすためにどのような変化が起きているかは明らかになっていなかった。
研究グループは,昼行性の魚と夜行性の魚の脳内の視蓋の大きさを比較。魚を捕獲した後,写真撮影をし,頭部をホルマリン液で保存した。その後研究室でそれぞれの魚の眼と水晶体のサイズを測定し,マイクロCTスキャナーで保存された脳をスキャンした。
サンゴ礁によく生息居住している夜行性の魚であるイットウダイは,昼間に活発な同サイズの魚に比べ,約3倍の大きさの眼を持ち,他の夜行性の魚も眼が大きめな傾向がある。当初,研究グループは,夜行性の魚の網膜は,昼間に活発な魚に比べ,より多くの桿体細胞および錐体細胞が備わり,より大きなサイズの視蓋が必要に違いないと推測していた。
しかし,イットウダイや他の夜行性の魚の視蓋は,昼間に活動して他の生物を捕食する魚に比べ,小さいことがわかった。これは,夜行性の魚の脳が,夜間にあまり役に立たない能力を放棄してしまった可能性を示唆している。光が少ない環境下では色は識別できないので,夜行性の魚は,色を感知する能力をあまり持たず,視野の深さも限定的となるが,その代わり,動きを検知する事が得意になったとしている。
研究では,カモフラージュを可能にする行動特性が,視蓋の大きさに影響している魚もいることがわかった。サンプリングを行なった魚のうち,最も大きな視蓋を持っていたモンダルマガレイは,カメレオンのようにカモフラージュの達人であり,周囲を模倣して環境に溶け込むことができる。研究グループによると,この特性は,モンダルマガレイがなぜ,ここまで発達した視蓋を持っているかの説明になるかもしれないと推測している。