富士キメラ総研は,高耐熱グレードの開発・採用により拡大する耐熱ポリマー,透明性に機能を付加することで差別化が進む透明・光学ポリマーの世界市場を調査し,その結果を「2018年 耐熱・光学ポリマー/特殊コンパウンドの現状と将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
この調査では,耐熱性や透明・光学特性を軸に採用されるポリマー35品目に加え,ポリマーにフィラーなどを追加することで特性を向上させた特殊コンパウンド6品目についても市場や採用用途などを調査・分析した。
高耐熱性,機械的特性,電気特性に優れる透明PI(ポリイミド)は,ディスプレーカバーフィルム,センサー基板フィルム,OLED照明や,フレキシブルプリント配線板,太陽電池基材向けなどで少量出荷されているものの,サンプル出荷が中心で2017年までは市場が限定されていた。
今後フォルダブルディスプレーのカバーシートで採用が予想され,2019年以降フォルダブルディスプレーの量産化が進むことで市場は急拡大し,2022年には78億円が予測する。コストダウンが進むことで,今後有望なアプリケーションである有機薄膜太陽電池やOLED照明などでも採用が期待されるという。
広範に利用されるPC(ポリカーボネート)に対し,光学用途などで主に使用される特殊PCの光学用途としては光学レンズ,光ディスク,光学フィルムなどがあるが,そのなかでも光学レンズ向けが中心となる。スマートフォンやタブレット端末などモバイル端末でのデュアルカメラ搭載や顔認証システムの導入が進んでいることから,端末1台当たりのレンズユニット数が増加している。また,1ユニット当たりのレンズの使用枚数も高精細化ニーズにより4枚から6~7枚へと増加しており,特殊PCの市場は2017年,2018年と2年連続二桁増が見込む。
車載カメラ,監視カメラ,ヘッドマウントディスプレイなどVR用レンズでも需要増加が予想され,車載カメラはセンシングカメラ用をターゲットに140度程度までの耐熱性向上が進められている。特殊PCは,フルオレン系ポリエステルと組成や物性が近く,モバイル端末,車載カメラなどの光学レンズ用途で強い競合関係にあるが,豊富なグレードラインアップがあり,ユーザーの使い勝手がよいなどの利点があるため,今後も市場は拡大を続け,2022年には347億円を予測する。
2018年の耐熱,透明・光学ポリマー35品目の市場は5兆8,697億円,1,179万トンを見込む。ポリマーは成形後の形状自由度が高く,軽量性,量産性に優れることから,自動車,光学用途などでガラスや金属の代替で採用が増加しており,2022年には6兆6,590億円,1,365万トンを予測する。
品目別には,フォルダブルディスプレーの立ち上がりとともに透明PIの高成長が期待できるほか,用途の広がりにより特殊PC,脂環式エポキシ,フルオレン系ポリエステル,PPS(コンパウンド)なども大幅な伸長を予想する。
なお,180度以上の耐熱性を特徴とするポリマーは16品目あり,高い耐熱性を要求される用途としては自動車の電装部品(コネクター,ECUなど),半導体関連装置部品,LCD・OLEDディスプレー用基板などを挙げている。