大阪大学の研究グループは,レーザーで核融合燃料が圧縮される際に問題となる表面の凸凹形成(レーザーインプリント)が,硬くて重たい物質では抑制されることを初めて明らかにした(ニュースリリース)。
燃料カプセルがレーザー光で直接照射される核融合の方式(直接照射型慣性核融合)では,核融合燃料が内包されたカプセルは高強度レーザーにより圧縮・加熱される。この方式で,高温(約1億度)・高密度(固体密度の約1000倍)状態のプラズマが実現すると,約100億分の1秒という短時間内に核融合反応が可能となる。
この核融合反応を起こすには,均一なレーザー照射に加え,ナノオーダレベルの膜厚均一性をもつカプセルが必要となるが,主に,“インプリント”と呼ばれる照射による凸凹形状の発生と,製作時のカプセル表面の粗さが,燃料の圧縮・加熱を妨げるため問題となっていた。
今回,研究グループは,まず,このインプリントの低減機構の解明を行ない,約100万気圧という超高圧状態においても弾性体として振る舞うダイヤモンドの硬さに着目し,インプリント擾乱における物質の硬さや密度の影響について基礎実験及びシミュレーションを実施した。
その結果,ダイヤモンドに生じるインプリント擾乱は従来の典型的なカプセル材料であるポリスチレンの約30%にまで低減されることを実証した。これにより,凸凹が形成されにくいダイヤモンドのカプセルを用いた核融合燃料の安定した圧縮と効率的な加熱が期待されるという。
さらに,大阪大学と産業技術総合研究所の研究グループは,水素とメタンから成る原料ガスをフィラメント加熱によって分解し結晶成長させる方法で真球度4~99.7%,そして数十ナノメートル以下の平滑性をもつ均一性の高いダイヤモンドカプセルの作製に成功した。研磨加工を必要としないこの手法は核融合用カプセルの大量生産に応用可能だとしている。