LiDARを開発する米Cepton Technologiesは7月13日,日本国内代理店を務める日本バイナリーにおいて製品のデモと記者会見を行なった。
同社はシリコンバレーに居を構える創業2年目のベンチャーで,CEOのJun Pei氏はLiDAR最大手のVelodyne出身の技術者。既に4種類の製品をリリースしており,60社上の納入実績があるという。そのうちOEMは9社,ティアワンが5社,ティアツーが3社,自動運転のスタートアップが20社などとなっており,この中には独シーメンスも含まれている。
LiDARには,光を拡散するフラッシュ方式とビーム状の光で走査するスキャン方式があるが,長距離を見たいときはスキャン方式が有利となる。さらにスキャンの方式には,ミラーなどを駆動させる機械式と,Optical Phased Array(OPA)に代表される駆動部の無いソリッドステートがある。
自動車業界では信頼性の問題から駆動部の無いソリッドステートに期待を集めるが,一方でソリッドステートはOPAを含め,自動運転に必要な性能を満たす製品は出てきていない。
CeptonのLiDARの最大の特徴は駆動方式で「Micro Motion Technology」(MMT)という独自の機構を採用している。このMMTは機械式だが,高精細なスキャンと低消費電力を両立しており,今年4月に発表した最新の「Vista LiDAR」は,200m先にある反射率50%の物体を検出する長距離測定と,水平300×垂直120(角度分解能0.2°×0.2°)の解像度を実現しながら,消費電力は9Wとなっている。
機械式で問題となる寿命だが,独自の構造により「ほぼ無限に使える」(シニア・ディレクター Wei Wei氏)としており,製品の寿命とする6万時間はあくまでレーザーなど周辺部品のものだという。MMTが具体的にどのような機構なのかは明らかにしていないが,「低摩擦」であり,イメージとしてはプロジェクターやスピーカーが近いという。
今回,車に「Vista LiDAR」2機と,長距離測定モデル「HR80T」1機を搭載してどのように見えるのか,実際に道路を走行するデモを行なった。「HR80T」は昨年1月に発表された最初のモデルの1つで,300m先をスキャンすることができる(分解能:80×80,視野角:15°×15°)。これを中央に据え,両脇に水平視野角60°の「Vista LiDAR」配置してデータを合成し,水平120°の3Dデータを走行しながら取得した。
晴天の日中という外乱光の強い条件でのデモだったが,近距離では車や人の形がはっきりと認識することができ,路面の白線も検出していた。また,遠方も250m先の物体を検出するなど,高いパフォーマンスを持つことが伺えた。
価格については量産効果により200ドルを目指すとしている。既に量産プロセスとラインを確立しており,25万平方フィートの工場も用意してる。主な顧客はアメリカだが,今後,日本市場にも注力していきたいとしており,現在,日本企業との提携も進めているという。
【Vista LiDARの主な仕様】
・測域範囲:200m ・重量:800g ・画素数:300(水平)×120(垂直)
・視野角:60(水平)×24(垂直) ・角度分解能:0.2(水平)×0.2(垂直)
・フレームレート:15Hz ・外形寸法(W×H×D)インチ:3.5×2.5×4.0
・消費電力:9W ,測域範囲分解能:2.5cm